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石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

トランプ政権、2020年の米国勢調査(センサス)からLGBTQ関連の項目を削除

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米国勢調査局が2017年3月28日に発表した、2020年度の国勢調査(センサス)の計画で、当初予定されていた「性的指向と性自認」の項目が削除されていると判明。LGBTQの人々の存在を消そうとする動きだとして批判されています。

詳細は以下。

BREAKING: Trump Administration Omits LGBTQ People from 2020 Census | Out Magazine

米国の国勢調査は1790年に始まり、以後10年ごとに実施されています*1Out Magazineのことばを借りれば「話す言語から家の配管設備まで」事細かなデータを集めてきたこの調査ですが、性的マイノリティに関しては同性カップル世帯についてしか調査されていません。それすら必ずしも正確な統計とはなっていないようで、たとえばNational LGBTQ Task Forceによれば、これまでの米国勢調査で既婚の同性カップルとして回答した人々は、以下のような扱いを受けてきたとのこと。

  • 1990年:片方の性別を「異性」に変えて、「異性同士の既婚カップル」としてカウントされた
  • 2000年:「婚姻関係にない同性カップル」とされた
  • 2010年:国勢調査では「婚姻関係にない同性カップル」とされ、別表で既婚同性カップルについての推測値にまとめられた(注:そもそもセンサス2010では同性カップルの7組に1組が同性カップルとしてカウントされていなかったとする研究結果も発表されています)

これではとても、性的マイノリティの人々の生活をよりよくするためのデータが十分把握できているとは言えません。

Out Magazineによれば、2016年の段階で複数の連邦機関が国勢調査局に対し、性的指向と性自認をデータに含めるよう要求していたとのこと。で、2020年の国勢調査では、当初の予定ではその2項目が初めて入ることになっていたのに、3月28日に発表された計画では結局両方とも消されてしまっていたのだそうです。

これについて、National LGBT Task ForceのMeghan Maury氏は以下のような声明を発表しているとのこと。

今日、トランプ政権は国勢調査とアメリカ地域社会調査からわたしたちを除外することで、LGBTQの人々が望んでいる自由、正義、公正を拒絶するための一歩をまたしても踏み出しました。LGBTQの人々は国勢調査でカウントされず、性的指向や性自認に関するデータも収集されません。これらの調査から得られる情報は、政府が「女性に対する暴力法(Violence Against Women Act)」や「公正住宅法(Fair Housing Act)」 のような法律を施行したり、住宅供給やフードスタンプのようなリソースの配分を決定したりするのに役立つものです。地域社会の中にLGBTQの人々がどれぐらいいるのかを政府が把握していなければ、政府はどうやって、わたしたちが必要としている権利や保護やサービスへの公平で適切なアクセスを保証するという責務を果たすことができるのでしょうか?

Today, the Trump Administration has taken yet another step to deny LGBTQ people freedom, justice, and equity, by choosing to exclude us from the 2020 Census and American Community Survey. LGBTQ people are not counted on the Census—no data is collected on sexual orientation or gender identity. Information from these surveys helps the government to enforce federal laws like the Violence Against Women Act and the Fair Housing Act and to determine how to allocate resources like housing supports and food stamps. If the government doesn’t know how many LGBTQ people live in a community, how can it do its job to ensure we’re getting fair and adequate access to the rights, protections and services we need?

2016年の米大統領選でトランプが勝ったとき、あたしが何に衝撃を受けたって、「米国がまるで日本みたいになってしまった」ということでした。あれだけおおっぴらに人種・民族差別発言や性差別発言を繰り返してきた人間が支持され、権力の座についてしまうだなんて、まるでジャパンみたいじゃないですか。なので今回のこのニュースを見たとき最初に思ったのも「米国の日本化がまたここにも……」でした。日本の国勢調査では、性的マイノリティの存在を可視化するどころか、同性カップルですら「誤記」扱いですからね。詳しくは以下を。

ちなみにトランプ政権は最近、高齢者の国民健康調査から性的指向に関する項目を削除する動きを発表したばかり。どこまで行くんでしょうね、この性的マイノリティの不可視化。デブラ・メッシングとラヴァーン・コックスによる以下の会話に、心から共感しました。

訳:「ちょっと、どういうこと? 彼ら(訳注:LGBTQの人々のこと)の存在を認めないつもり? 彼らのアメリカ市民としての貢献を? 彼らが払った税金返してくれるの?」。

訳:「わたしは長年ずっと、データを集めることやLGBTQの人々の重要性について話してきました。わたしたちはただ、数に入れてほしいだけなんです」。

*1:現在では10年に1度のセンサスに加え、1年ごとの「アメリカ地域社会調査(American Community Survey)」という標本調査も実施されています。

『OITNB』のサミラ・ワイリーが脚本家ローレン・モレッリと結婚

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Netflixドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』で人気の米女優サミラ・ワイリー(Samira Wiley)が、かねてより婚約中だった同番組の脚本家ローレン・モレッリ(Lauren Morelli)と結婚しました。

詳細は以下。

Surprise! Samira Wiley And Lauren Morelli Got Married And Everything’s Perfect | Autostraddle

サミラとローレンは2014年から交際を公表しており、2016年10月に婚約。結婚式は2017年3月25日にパームスプリングでとりおこなわれたとのこと。

以下、サミラ・ワイリーのInstagramより写真を引用します。

#aboutlastnight

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#wifed

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おめでとうございます、お幸せに!

映画『パワーレンジャー』(2017)がロシアで18禁に 理由はイエローレンジャーがレズビアン(?)だから

Power Rangers: The Official Movie Novel

米/カナダの特撮スーパーヒーロー映画『パワーレンジャー』(2017)が、ロシアで18禁指定を受けました。原因は、メインキャラのひとり、トリニー/イエローレンジャーが女の子を、つまり同性を好きらしいと示唆する場面があるから。

詳細は以下。

'Power Rangers' Gets Strict Age Restriction in Russia, Presumably Over LGBTQ Character | Hollywood Reporter

この映画は、日本のスーパー戦隊ものを英語圏向けにローカライズしたテレビドラマ『パワーレンジャー』シリーズの劇場版リブート。監督はディーン・イズラライト(Dean Israelite)で、IMDbによれば、公開日は米国で2017年3月24日、ロシアで同3月23日、日本で同7月15日です。

本作品には、ベッキー・ジー(Becky G)演じるところのキャラ、トリニー/イエローレンジャーが異性愛者ではないらしいことが示される場面が出てくるのだそうです。それが気に入らなかったのが、ロシアのあの「同性愛プロパガンダ禁止法」(未成年に対する『同性愛の宣伝』を違法とする法律)を起草したビタリ・モロノフ(Vitaly Milonov)議員。彼は3月23日、つまりロシアでの『パワーレンジャーズ』封切り日に、同国の保守派TVネットワークでこの映画をテロリストが爆弾を仕掛けた子供向けおもちゃになぞらえ、ロシアでは禁止すべきものだと主張したのだそうです。他に、アレクセイ・ジュラフリョフ(Alexei Zhuravlev)議員も、『パワーレンジャーズ』に公開許可を出した文化省を批判。翌日には配給元から、当初16歳未満禁止だったレイティングを18歳未満禁止にするという発表がなされました。

ただ、これ、そこまで大騒ぎして子供の目から隠さなければならないような描写かというと、どうもそうではなさそうなんですよねえ。ロシアで3月23日の時点で(つまり、レイティング変更前に)この映画を観た人は、Hollywood Reporterの取材に対し、「(トリニーは)かっこいいから、同性愛者でもそうじゃなくても気にしない」(アナスタシアさん、18歳)、「どのみちかなりのアホ映画だからトリニーが何であろうとどうでもいい」(ニコライさん、26歳)などと話しているとのこと。また、先ほどRotten Tomatoes経由でトップ批評家による本作品のレビュー計20本にざっと目を通してみたところ、半分ぐらいがそもそもトリニーのセクシュアリティの描写について言及しておらず、言及がある場合でも、その場面の時間が短いとか、描き方が臆病だとか、ほのめかしはあっても断言はないとかいった評価がほとんどでした。セクシュアリティの要素が「旧作では一度も描かれなかった新たな一面をキャラクタに付け加えている」と好意的に評価しているレビューでも、このシーンは「とても素早く、かすめるようにして終わってしまう」と説明されています。結局のところ、先日の『美女と野獣』(2017)と同じで、そこまで大げさに騒ぐほどのものではないのでは。

なおイズラライト監督は、3月20日付のHollywood Reporterの記事の中で、トリニーの性的指向にまつわるシーンについて下のように語っています。

「トリニーは自分がどんな人間なのかについて本当に悩んでいるんです」とイズラライトはハリウッド・レポーターに話した。「彼女はまだ自分のことが全部はわかっていないんですよ。わたしの考えでは、そのシーンですばらしいのは、そしてそのシーンが映画のそれ以外の部分を前に推し進めているのは、『それでいいんだ』という要素です。この映画は、『それでいいんだ』と言ってるんです。子供はみんな、本当の自分を持ち、自分の仲間を見つけなければなりません」

For Trini, really she's questioning a lot about who she is," Israelite tells The Hollywood Reporter. "She hasn't fully figured it out yet. I think what's great about that scene and what that scene propels for the rest of the movie is, 'That's OK.' The movie is saying, 'That's OK,' and all of the kids have to own who they are and find their tribe."

たとえ「とても素早く、かすめるようにして」終わってしまう短いシーンでも、「それでいいんだ」というメッセージは子供にとって大切なものなので、せめて当初の16禁のレイティングで公開してほしかったです。ちなみにロシアのレイティングで18禁というと、『キャロル』と同じ枠。何もかもおかしすぎる。

Netflixで見られる、LGBTQ+キャラのいるTVドラマベスト9(by Pinknews)

Netflix

英国のニュースサイトPinknewsが、Netflixで見られるTVドラマの中から、LGBTQ+キャラの登場するドラマのベスト9を選んでいます。うち8本は日本のNetflixでも視聴可能(2017年3月現在)な作品です。

詳細は以下。

These are the best TV shows on Netflix with LGBTQ+ characters · PinkNews

上記リンク先で選ばれている9作品をリスト化すると、こうです。

  1. 『オーファン・ブラック』
  2. "Brooklyn Nine-Nine"(※日本未配信)
  3. 『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』
  4. 『クレイジー・エックス・ガールフレンド』
  5. 『リバーデイル』
  6. 『殺人を無罪にする方法』
  7. 『シッツ$クリーク』
  8. 『アンブレイカブル・キミー・シュミット』
  9. 『Archer』

日本で見られる8作品のうち『リバーデイル』、『シッツ$クリーク』、『Archer』以外はひととおり見てますが、確かにどれも面白かったです。『オーファン・ブラック』でタチアナ・マズラニー演じるレズビアンキャラ・コシマは世界中のレズビアンのティーンエイジャーたちを力づけていますし、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』では、レズビアンのみならずトランスジェンダーのストーリーラインも綿密に作りこまれています。ハチャメチャなコメディ『クレイジー・エックス・ガールフレンド』では主人公の上司ダリルがだんだん男性への気持ちに目覚めていくプロセスが楽しく、『アンブレイカブル・キミー・シュミット』は、ゲイの売れない役者タイタスの歌とギャグがひたすらファビュラス。

ただね、おじいさん同士のラブラブゲイカップル描写が光る『グレイス&フランキー』や、ゲイもトランスもパンセクシュアルな関係も出てくる『センス8』や、キューバ系米国人家族(15歳の長女がレズビアン)が主役の傑作シットコム『ワンデイ 家族のうた』が選ばれていないところは納得いきませんよあたしは! 豪コメディ『プリーズ・ライク・ミー』だって独特の味わいが面白いのよ!……とは言っても、LGBTQ+キャラが出てくる良質なドラマがこうやって文句が言えるほどたくさんあるだけでありがたいので、結局「ま、いっか」とも思ってしまうんですけどね。少し前まで性的マイノリティのキャラの出てくるドラマも映画も今よりずっと少なく、情報もなくて、己の勘とゲイダーだけを頼りにレンタルDVD店で一生懸命作品を探していたことを思えば、今はまるで天国のようです。ネット配信ならば個別のデバイスで見られますし、セクシュアリティのことで悩んでいる中高生などがスマホ等を使ってこういうドラマを楽しんでくれてるといいなと思います。

メニューで「女々しいホモ("poof")」を嘲ったNZのサンドイッチ店、「うちはポリネシア系だから」と言い訳

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ニュージーランドのサンドイッチ店がメニューで"poof"(『なよなよした男性』または『男性同性愛者』を意味する侮蔑語)を中傷する表現を使用。批判を受けて撤回しつつも、「うちはポリネシア系の店なのでこれは侮蔑表現ではない」と主張しています。

詳細は以下。

Sandwich shop says ‘poof’ menu wasn’t meant to offend anyone · PinkNews

このお店、「バン・ミー・キーウィ(Bun Mee Kiwi)」は先週末オークランドで開店したばかり。「バン・ミー」というのは日本で言うところの「バインミー」、ベトナム風のサンドイッチのことですね。問題は、同店のメニュー表でのこのバインミーの説明の仕方にありました。以下の画像の、サンドイッチの絵のすぐ下の白い文字の文章にご注目を。

問題の部分を書き起こすと、こんな風になります。

すべて自家製のソースとパテ、ニンジン、大根、きゅうり、コリアンダーとハラペーニョ(あなたが女々しいホモでない限り!)が入った、「ベトナム風ロールパンサンドイッチ」

"Vietnamese filled roll" all served with Home made sauces, pate, pickled carrots & daikon cucumber, coriander & jalapeño (unless you're a poof!).

味覚と性的指向とは何の関係もないのに、わざわざゲイを馬鹿にしながらでないと青唐辛子も食べられないの、この店では? おそらくこれって、己の男らしさに自信がなくて、一生懸命「(想像上の)女々しいホモ」を馬鹿にして「俺はあいつらとは違う」とふんぞり返っていないと自分が保てなくなるみじめなヘテロ男性のためのサービスなんでしょうね。そんなことのためにいちいちダシにされる同性愛者にとっては、クッソ迷惑だわ。

このメニューがホモフォビックだという批判を受けて、同店はハラペーニョの説明の仕方を変えたとのこと。しかしながら、こうした批判に対する同店のfacebookでの反応は、こんなだったのだそうです。

うわ、うわ、うわ、みんな落ち着けよー。もしも「女々しいホモ」ってことばがオフェンシヴなら、もっとふさわしいことばを探すからさあ……

“Woah woah woah people relaxxx.. if the word poof is offensive we will find a more appropriate word…

(メニューを)変えるよ、仮に「女々しいホモ」がオフェンシヴなんだとしたら、もう一度謝るよ……。店内のメニューボードもあと何日かで変える……あのさ、人生は短すぎて、ク〇なもんを食ってる暇はないだろ……だから店に来て、今日バインミーを食べてみてよ……まじで人生変わるからさ

Change is made apologies again if the word poof was offensive…. the in store menu board will be changed in the next few days also … remember life’s too short for S#!t food … so get in and try a Bun Mee today… No S#!t it will change your life

この「もし~なら謝る」という謝罪スタイル("if apology")は、典型的な「謝らない謝罪」("non-apology apology")というやつですね。"poof"というのはOEDでもはっきり「軽蔑的」とされている語なのに、わざわざ仮定法まで使ってあたかもこの語をオフェンシヴだと受け取ることが非現実的であるかのようにふるまうとは、責任逃れもいいとこです。途中から話が店の宣伝にすり替わっているところも、とても誠実とは受け取れないと思います。なお、このような「謝らない謝罪」について、詳しくは以下をどうぞ。

さらに悪いことに、店長のジョン・バクスター(John Baxter)氏がGaynz.comに語った内容も、「謝らない謝罪」("non-apology apology")だったようです。

わたしたちが少数の人々を間違ったやり方で刺激してしまったことは明らかです。あのことばが使われた文脈は、誰かを攻撃することを意図したものではありませんでした。

Obviously we stirred a few people the wrong way, that context in which it was used was not supposed to offend anyone

この発言の問題点は、このあたりです。

  • 「間違ったやり方」をとった責任が誰にあるのかを追及せず曖昧にしている(『謝らない謝罪」の『間違いが起きた("Mistakes were made")』パターンに該当)
  • 抗議する人は「少数」だとして問題の矮小化をはかっている
  • 抗議する人は「文脈」を無視しているのだと示唆することで、問題を抗議者の感じ方のせいにしている

どこの国でもよく見るよねー、こういう「謝罪」文。

ちなみにこの店長、こんなこともおっしゃっているようです。

わたしたちはポリネシア系ですから、あの語はわたしたちにはオフェンシヴではないのです。

We’re from a Polynesian background and so it’s not offensive to us.

ならポリネシアで開店すれば?

ちなみにニュージーランドで2007年に実施された調査によれば、同国では同性愛者や両性愛者の子供の自傷リスクはそうでない子供の2倍、学校でいじめられるリスクは3倍だそうです。"poof"と呼ばれていじめられたという話も珍しいものではありません(例1例2)。何系の人がやっている店であろうと、"poof"は嘲笑していいのだというメッセージをこれ以上社会に向かって放つことは、許されるものではないと思います。とりあえずメニューの文言が変わったのはよかったけど、ニュージーランダーのゲイメンは大挙してこの店の前でハラペーニョ・パーティーを開くぐらいの皮肉をぶちかましてもいいぐらいなんじゃないかと思いました。

実写版『美女と野獣』(2017)公開情報続報:マレーシアは完全版公開、クウェートは上映中止へ

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実写版『美女と野獣』(2017)、ゲイ要素のためマレーシアで上映延期 ロシアで年齢制限(追記あり) - 石壁に百合の花咲くの続報。マレーシアでは結局PG13でのノーカット公開となり、一方クウェートの映画館チェーンは上映禁止を発表しています。

詳細は以下。

『美女と野獣』 クウェートで上映中止 マレーシアは完全版公開へ 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

クウェートもイスラム教国ですし、こんなもんでしょうねえ……。

ところであたし、先日のマレーシアでの上映延期騒ぎを報じたBBCが、同国での刑法(同性愛は違法)などについて報じた上でこんな風に付け加えていたのが忘れられないんですよ。

(マレーシアでは)映画に同性愛者のキャラクターが出てきてもよいが、それは同性愛者がネガティブに描写されていたり、悔い改めたりする場合だけだ。

Gay characters can be shown in films, but only if they are portrayed negatively or repent.

……これって宗教を問わずどこの国にでもある考え方な気がします。日本でもね。わかりやすい例で言うと、「やっぱり百合は悲恋じゃなくちゃ!」「背徳感や罪悪感で悩まなくちゃ!」「しょせん最後は男に戻っていくんだから、思春期だけの感情だよね!」なんていうのは、上記の考え方と地続きだと思うんですよね。なまじ宗教的な禁忌を理由としている方が、宗教指導者の鶴の一声で変わる可能性もある分だけ厄介さが少ないかも、なんてことを思ったりしています。とりあえずマレーシアでのノーカット公開が決定してよかったです、たとえPG13(13歳未満の鑑賞に保護者の注意が必要)枠でも。

ようこそテリー・ハッチャー……―ドラマ『スーパーガール』2x16感想

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モン=エルの正体(と過去の屑っぷり)、ついに露見

カーラがついにモン=エルの正体を知る回。とある星の王妃役で登場するテリー・ハッチャーと、一瞬だけ出てくるアレックス&マギーのアットホームないちゃいちゃシーンが良かったです。それ以外はぐだぐだ、特にモン=エルのストーリーラインが超ぐだぐだ。

おかえりなさい、ロイス・レイン

前から伏線的に少しずつ出てきていたテリー・ハッチャーが、今回ついにとある星の王妃として地球に降臨。テリー・ハッチャーと言えば『デスパレートな妻たち』のスーザン役が有名ですが、それより何より、90年代のTVシリーズ『新スーパーマン』(Lois & Clark: The New Adventures of Superman)でロイス・レイン役をつとめた女優さんだということを忘れてはなりません。『スーパーガール』はこれまでにも、『新スーパーマン』でクラーク・ケント役だったディーン・ケインをカーラの父親役に、そして80年代の映画『スーパーガール』でスーパーガール役だったヘレン・スレイターをカーラの母親役に当てるなど心憎いキャスティングをしてきていますが、今回のテリー・ハッチャーの起用も大成功だったと思います。

この王妃はある種のヴィランの役回りなのですが、単純に彼女の個人的性格が邪悪だったりねじくれていたりするというわけではありません。基本的に彼女は、時代と場所によっては地球でも主流派となる価値観を持っているだけ。そのことがよく伝わってくる演技だったと思いますし、初めて彼女を見るちびっこ視聴者たちにも、美しく威厳ある(そして怖い)クイーンとして映ったのでは。そうそう、衣装はこんなです。

なお今回のエピソードでは、2016年の米大統領選キャンペーンでさんざん聞かされた某キャッチフレーズをこの王妃様の台詞ごしに皮肉る箇所があり、ベタではあるけど楽しかったです。シーズン中のどこかでやるんじゃないかとは思ってましたが、ここだったんですね。

まばたき禁止、一瞬のサンバース(アレックスとマギーのカップル)

「下着姿のアレックス(カイラー・リー)とマギー(フロリアナ・リマ)が、家のカウチで仲良くくっついてうたた寝している」というすばらしいシチュエーションが序盤に出てきます。マギーはアレックスのお腹に頭を載せていて、どうやらふたりで映画か何か見ている間に寝入ってしまったという設定の模様。でも、正味4秒ぐらいしかないんですよ、このカット。あれこれメモをとりながら小さなタブレットで視聴していたあたしは完璧にこの場面を見逃し、2度目の鑑賞でようやく確認することができました。これからご覧になる方は、くれぐれもご注意を。S2E16でいちばんいいシーンはこれですからね!

冴えわたるモン=エルの屑っぷり

今回のエピソードは、上記のテリー・ハッチャーとサンバース以外の部分はほとんど我慢大会の体をなしています。というのは、基本的にモン=エル(クリス・ウッド)が主体の話であり、しかも彼の屑っぷりがこれまでのエピソードの比ではないからです。あれ見てるだけでストレス過多のあまりノルアドレナリンが分泌されまくって瞳孔が開いちゃうよ。なんであんなのがヒロインのお相手役なんだよ。

フラッシュバックで明かされる過去のモン=エルの姿も、現在の地球の恋愛関係についての『リサーチ』結果を得々として発表する彼の姿も、そして口をとんがらかして自己正当化する姿も、傲慢・身勝手・無責任のお手本のようです。ちなみに、彼が何らかの具体的行動でこれまでの愚行の責任をとったり罪をつぐなったりするような展開は特になし。彼のしていることと言えば、責任から逃れることと、相も変わらずお得意のしおらしげな顔を作って口先でペラペラとカーラに謝って見せることだけです。本当になんでこんなのがヒロインの(略)

モン=エルが目をうるうるさせて「ボクちんダメな奴だけど君さえいれば変われるの、だから捨てないで(大意)」という長口舌を披露しながらカーラ(メリッサ・ブノワ)ににじり寄るクローズアップショットなど、ラブロマンスというよりほとんどホラーにしか見えませんでした。アルコール依存症患者やDV加害者が共依存の相手を操作しようとするときの手口にそっくりですよ、あれ。それでも今回はカーラが一瞬だけ正気にかえってまともな選択をする場面もあるのですが、今後またすぐ元の状態に戻るであろうことを示唆する描写もあり、がっくりしました。こんなトキシックな関係がなぜここまでロマンティサイズされ続けなければならないのか、さっぱり理解できません。

知ってました? スーパーガールって、バットウーマンやワンダーウーマンと一緒に、"MY FIRST BOOK OF GIRL POWER"という幼児向けのガールパワーの絵本にも出ているキャラクタなんですよ。

DC SUPER HEROES: MY FIRST BOOK OF GIRL POWER

DC SUPER HEROES: MY FIRST BOOK OF GIRL POWER

なのに、ドラマ版シーズン2後半のカーラ/スーパーガールときたら、ガールパワーのガの字もなし。もうこの絵本の次の版からはスーパーガールを外して、代わりにサンバースを入れるべきではないかと。

ちなみにエンターテインメント・トゥナイトの独占インタビューで「あなたはキャラメル("Karamel"、カーラとモン=エルのカップルのこと)の恋愛関係のファンですか」と聞かれたメリッサ・ブノワは、イエスとは即答せずにこんな風に答えていました。

いや……ええと、えー……あの、わたしは「カーラが幸せであること」のファンですね。

"I don't...I...I...you know what, I'm a fan of Kara being happy."

意味深だと思うんですよね、この回答。

まとめ

とりあえずテリー・ハッチャーの王妃姿とサンバースのいちゃいちゃを存分に楽しんだら、あとは薄目で流し見するぐらいでちょうどいい回でした。あ、ウィン(ジェレミー・ジョーダン)とライラ(タムジン・マーチャント)のサブストーリーは悪くなかったので、そこは目を開けていても大丈夫。シーズン2の後半はただでさえ迷走気味でしたが、フィナーレまでのあと5話で果たして「カーラが幸せであること」が描けるのか、大変疑問に思っています。

余談

このS2E16は『フラッシュ』とのクロスオーバーでのミュージカルエピソードのとっかかりとなる回ですが、こちらでは歌う場面は出て来ません。ミュージカルのシーンが見たければ、この続きとなる『フラッシュ』のS3E17(本国3月21日放映分)だけ見た方が早いです。トレイラーはこちら。

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