石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

PSゲーム『サガフロンティア』(スクウェア)レビュー

サガフロンティア

サガフロンティア

今ひとつ整合性に欠ける百合RPG

期待はずれの出来でした。いくらレズゲー冬の時代に発売されたからといって、こんなものをいつまでも大々的に持ち上げてどうするんだ、レズゲー好き諸君。シナリオは整合性に欠けているし、女同士の愛だって随分と唐突で、かつ「なんちゃってレズ」くさいじゃないですかこれ。

「サガフロンティア」はフリーシナリオのRPGです。7つあるメインシナリオのうち、半妖の少女アセルスを主人公としたものが一般的にレズゲー/百合ゲーとして評価が高いようです。確かに他の女性キャラとの精神的なつながりらしいものがほのめかされたストーリーですが、あたしは最初から最後までこのシナリオにノレませんでした。以下、その理由を説明してみます。

1. アセルスの口調に整合性がない

女言葉と男言葉の混在

シナリオ中で女言葉になったり男っぽく話してみたり、アセルスのしゃべり方には一貫性がなさすぎです。『サガフロンティア解体新書』では「言葉づかいが変わるのは妖魔独特の揺れ動く内面の現れ」なんて苦し紛れの説明がされていましたが、あたしの目から見るとアセルスの唐突な男言葉は思春期の一過性の「僕女」っぽくて、はっきり言ってかなり気持ち悪かったです。

たとえば、最初、お針子のジーナに対しては、

「私はアセルス、あなたは?」

と普通の女言葉で話しているのに、水妖のメサルティム(女)に向かっては

「君のことを教えてよ、そのために来たんだ」

いきなり「君」。しかも微妙に男言葉くさい。

果たしてエンディングではアセルスはジーナを「君」呼ばわりしています。こんな感じです。

「君は私にとって特別な人だ。私の最初の姫だからな」

「君のおかげだよ、ジーナ」

というわけで、どうも口調に整合性がなさすぎて、このキャラクタにはうまく感情移入することができませんでした。

なんちゃってレズ臭

女性に魅かれる女性キャラが男性っぽくふるまいたがるのって、異性愛中心主義を捨てきれない「なんちゃってレズ」の香りがすると思います。特にアセルスの場合、最初は女言葉だったということが裏目に出て、余計に「ノンケ女子が一時的に、男気取りの(=女と付き合うのは男の役目だと思いこんでいる)『なんちゃってレズ』になっている」という雰囲気が漂っており、個人的にはあまり好きになれませんでした。

ジーナって結局ノンケじゃん

この人、アセルスに恋心を抱いているらしいのですが、もともとはアセルスのことを男だと思ってあこがれてたんですよね。そんなジーナに向かって半端な男言葉で話すアセルスも気持ち悪いし、それで惚れちゃうジーナも結局はただのノンケなんじゃないでしょうかね。

2. 表記に統一感がない

「ああーダメだわ」

「まだ夢見てたりしてね!」

針の城で半妖として目覚めたというおどろおどろしいオープニングにしては、いささか子供っぽすぎる台詞回しだと思うんですよ、これ。もしも全編そのトーンで貫かれていれば、それはそれで納得だったのですが、シュライクでのとあるシーンでは、

「私どうしたんだろう? チョットどきどきしてる。ううん、そんなはず無い、そんなはず無いわ」

……カタカナによる「チョット」って、明治かせいぜい昭和初期に多用された表現だと思うのですが。たとえば1935(昭和10)年に刊行された夢野久作の『ドグラ・マグラ』にはこんなくだりがあります。

ワ――ッ……先生ッ。チョチョチョチョットお待ち下さい。チョットチョット。いいえ放しませぬ。チョットお待ち下さい。血相をお変えになってどこへお出でになるんで……ナ何ですって……。

typoと言えばそれまでですが、こうした半世紀以上前に流行った表記と今どきの小学生みたいな言い回しが混在しているというのは全体的な統一感を弱め、ストーリーの説得力を落としていたと思います。

3. 白薔薇の言動に整合性がない

アセルスの逃亡に二つ返事で(ここ重要)手を貸し、ついでに自分もごく安易に(ここも重要)ついてくる白薔薇。何か考えがあるのかと思ったら、後になって突然「あの方が、オルロワージュ様がお怒りになる……」とビビり出すのはいったい何なんですか。逃げたらオルロワージュが怒ることぐらい、最初からわかりきっていると思うのですが。何も考えずにフラフラと城を出て、後から「いやん怒られちゃう」と思ったんでしょうか?

4. オルロワージュの言動に整合性がない

だいたい、なぜアセルスに血を与えたのか皆目不明。血が紫色かどうか確かめるのに、わざわざセアトに背後から剣でぶっすり刺させるのも変。アセルスは12年も寝てたんだから、耳でも指でもちょっと切って確かめとけばよかったのに。

さらに、アセルスと白薔薇が逃げたときに、「ふむ。これで面白くなる」とか言って余裕ぶっこいてたくせに、しばらくするとなぜだかムキになって白薔薇を捕らえようとかアセルスを殺そうとし始めるあたりも、わけがわかりません。何がしたいんでしょうかこの妖魔は。

5. 白薔薇とアセルスの恋のプロセスに整合性がない

ここが一番の不満かな。一応、このふたりが互いにひかれ合い始めたことがオルロワージュの逆鱗に触れたって設定らしいんだけど、そのへんの説明はスコーンと抜け落ちていて、
ジーナのナレーションが申し訳程度に入るだけ。引用してみると、こんな感じです。

アセルス様と白薔薇姫様の関係は日に日に強くなっていました。 すべてが終わった後、アセルス様は、この頃の事を懐かしそうにお話になっていました。
そのご様子に私は軽い嫉妬を覚えたものです

これだけでいきなり、

「ダメだ、白薔薇! 白薔薇に触れるな!」 (アセルスが敵に向かって叫ぶ台詞)

とか盛り上がられても、どうしてそこまで白薔薇と仲良くなったのかわからないってば。

「白薔薇、どこにも行かないで。私のことを本当にわかってくれるのはあなたしかいないんだから」(追っ手を倒した後のアセルスの台詞)

……だから、なんでそこまで入れ込んでるのよ? 

ふたりの心の琴線が触れ合うエピソードのひとつも入れてくれればよかったのに、そういうものはまるで無しで、ひたすらアセルスが絶叫するのみ。レズビアンの(=女同士が恋をするのが当たり前だと思っている)あたしですら、「なんでこいつらデキてんの?」と不審に思ってしまって、話についていけませんでした。

ちなみに、「フリーシナリオだから、説明不足や多少の整合性のなさは当たり前」っていう言い訳は通じませんよ。あたしゃ元祖フリーシナリオのロマサガシリーズは1から3までリアルタイムでゴリゴリ遊び倒していますが、ロマサガではここまでひどい説明不足や整合性のなさを感じたことなんて一度もありませんでしたからね。フリーシナリオがいけないのではなく、サガフロアセルス編のシナリオが貧弱なだけだと思います。

まとめ

百合ゲー/レズゲーと呼ぶには「なんちゃってレズ」臭が強すぎると思います。また、ストーリーや表記に整合性が乏しすぎるところもいただけませんでした。