石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

映画『ベッカムに恋して』感想

ベッカムに恋して [DVD]

ベッカムに恋して [DVD]

レズビアン疑惑の扱い方が秀逸

この映画にはレズビアンっぽく見えるキャラクターこそ出てきますが、はっきり同性愛者とわかる人はひとりも出てきません。なのになぜレズビアン映画の枠で取り上げるのかというと、「レズビアン疑惑に対する周囲の反応」ってやつがなかなか面白く描かれているからです。あたしは好きだな、これ。

あらすじ

主人公ジェスは厳格なインド系イギリス人家庭の女の子。サッカー少女ジュールズに誘われてこっそり女子チームに入り、女同士の友情を深めながら、夢と親との間で奮闘する……というのがこの映画のあらすじです。 冒頭で書いたレズビアンっぽいキャラというのはジュールズのことなのですが、服装とか表情がすごくそれっぽいので、あたしは途中まで真剣にこの子とジェスは恋仲になるのかと思ってました。だいたいこの映画、日本に紹介される前に、海外のレズビアンサイトでけっこう話題になってましたし。

見どころ

実際にはジュールズとジェスは最初から最後まで(おそらく)ノンケで、ふたりの間には友情しか起こらないんだけど、周囲がいろいろ誤解するんだよね。そこがレズビアン物としてのこの映画の見どころです。

普通、青春映画だと、レズビアン疑惑に対する周りの反応ってやたらとネガティブなのが多いじゃない? で、「偏見にめげずに愛を貫くワタシたち」的なクサい展開になったり、思いつめた主人公が出奔したり殺されたり、あるいはコミカルに笑い飛ばしてハッピーエンドになったり、ってぐらいしかオチのパターンがないでしょ。

でもこの映画は微妙に違うのよ。ジェスの親もジュールズの親も同性愛に対しては否定的なんだけど、頭ごなしに「変態」と怒ったり絶望して泣き崩れたりはしないで、なんか別方向にズレてるの。そのあたりにインド人と英国人の価値観のようなものが垣間見えてなかなか興味深いし、コメディーとしてもすごくよくできてました。

ジェスの親の反応

まず、ジェスの親の誤解。これは、ジュールズが遠目に男の子に見えてしまったために起きた、

「ジェスは道端で英国人の男の子といちゃいちゃしていた」

という誤解が発端です。

もう、両親の怒ること嘆くこと。保守的なインド系イギリス人にとって、娘が英国人と付き合うなんていうのはとんでもないことらしいわね。その後、この誤解のせいで自分の婚約が破談になったことに腹を立てていた姉が

「その友達はサッカーチームのレズビアンよ。ジェスはずっと嘘ついてサッカーやってたのよ!」

なんて叫ぶのですが、両親の怒りの矛先はジェスがレズビアン(かもしれない)ということよりむしろ、親に隠れてサッカーしてたことの方に向くの。このインド人一家にとっては、同性愛は「英国人と付き合うこと」や「親の言いつけに背くこと」に比べればまだ小さな罪なのかしら? 実際、かなりストーリーが進んだ時点で、ジェスが親族一同の前でレヅ呼ばわりされるシーンがあるのですが、ここも非常にコミカルな展開で無事に済んじゃってますし。このあたり、ちょっと意外でおもしろかったです。

ジュールズの親の反応

一方ジュールズの親の誤解はというと、ジェスとジュールズの会話を小耳にはさんだ母親が、てっきり女同士の痴話喧嘩だと思い込んだのが始まりです。この母親が、もう、すごい。ひとしきり泣いてたかと思うと

「ジョージ・マイケルは気の毒だわ。わいせつだのゲイだの書き立てられて」

といきなりゲイの芸能人に同情し始めたり、

「ママは平気よ。ナブラチロワの大ファンだったし」

と言い張ってみたりで笑えます。同性愛者=何が何でもダメ、という設定じゃないのが楽しかったし、ギャグとしてもよくできてました。

オチについて

オチがどうなるかは伏せますが、基本的に悪い人がひとりもいない気持ちの良い映画です。人種差別問題や性差別問題を扱いつつ、あんまり重くなりすぎていないのがいいと思う。展開がご都合主義だという批判もありますが、この手の映画でガチガチのリアリズム的展開を期待してどうする。あたしは、これでいいと思うな。

もうひとつのお勧め理由

あと、レズビアンな観客の皆さんにお勧めするグレイトな理由がもうひとつ。

この映画、若いおねーちゃんのへそ出し&短パン姿がてんこもりよ!  練習シーンなんか、引き締まったお腹や脚が見放題よ!

間抜けな邦題に騙されず、一度レンタルしてみてくださいな。 是非。