石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

映画『マルホランド・ドライブ』感想

マルホランド・ドライブ [DVD]

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切ない傑作

「意味不明」とか「難解」とかいう意見もよく聞く映画だけど、あたしはこれは切ないレヅ映画と受け取りました。ナオミ・ワッツの乳もいいし、ストーリーは泣けるし、よくまとまったいい話じゃないですか。少なくとも、『イレイザー・ヘッド』を見て「わっかんねーよ! それにあの男、林家三平にしか見えん」と言い放ち、『ツインピークス』は最初の5分で寝たあたしですら抵抗なく楽しめたのですから、世で言うほど難しい映画ではないと思います。個人的には、とても好きです。

観たけどわからなかったという人は、ひょっとして、「三単一の規則」みたいな古典的な作劇ルールに染まりすぎてるんじゃないでしょうか。現代の映画や演劇では、劇の中の経過時間と現実の時間とは一致してなくてもいいし、場所もころころ切り替わったっていいし、いくつもの事件が同時進行してたっていいはずなのですが。特にこの映画の場合、「夢」を映像化したという色合いが強いので、古典的な見方をしていてはなおさら話についていけなくなると思います。

と、偉そうなことを書いてますが、あたし自身もDVDの中に入っていた「この映画の謎を解く、監督からの10のヒント」を見ていなかったら「わからん!」と吼えていたかもしれません。ヒントを見てても謎は多かったのですが、クラブ・シレンシオの男が朗々と語るシーンで「そうだったのか!」と腑に落ちました。あとはひたすら泣けました。話の構造がわかってしまうと前半のむちゃくちゃな展開もすべて許せます。いや、むしろ、ああでなければ困る、とすら思えます。ラストシーンでは、パズルのピースが全てきちんとはまったような爽快感すらおぼえました。

謎を読み解くコツ

この映画を読み解くコツは、ゲームだと思って謎解きを楽しみつつ見ることです。実際、『マルホランド・ドライブ』の全体的な暗さと不気味さ、謎解きの要素はPSのホラーゲーム
『サイレントヒル』を連想させます。ベティとリタがダイアン・セルウィンの住居を訪れるシーンなど、まるきり『サイレントヒル』で手がかりを求めて病院やアパートをうろつく場面のようでした。

ひょっとしたら、もはやゲームが映画を模倣する時代は過ぎ、両者は影響し合いながら融合しているのかもしれません。映画はフラグが立ったところでいちいち画面がストップしてくれないのが大変ですが、その大変さもまた『マルホランド・ドライブ』を見る楽しみのうちだと思います。要するに、大人が楽しめる極上のゲームですよ、これ。

同性愛的要素について

ところで、この映画における同性愛的要素について。レズビアンが話のキーワードになる暗い話っていうパターンはもううんざり、と思ってたんだけど、こういう描き方なら別にイヤじゃないなあ。レズビアニズムが「至上の愛」扱いも「諸悪の根源」扱いもされていないというのは、なんだかほっとします。

もっとも、ネット上のあちこちのレビューを読んでたら「ベティが同性愛の関係を始めるのは破滅の象徴」とする解釈もあって大笑いしたけどね。「主人公がいきなりレズに走るのが理解でき
ん」と見当違いのことを述べている人もいました。

ホモフォビックな人にとってはどこまでいっても同性愛は悪で、何か変な理由があって「走る」ものなんだねえ。レズビアンであるあたしの目から見ると同性愛ってそんなもんじゃないし、この映画の中でもそんなくだらない描き方はされてないと思うんだけどね。このへんは個人によって解釈が違うと思うので、ぜひともいろいろな方の意見が聞きたいところです。

セックスシーンについて

個人的には、この映画の中の女同士のセックスシーンは必要にして充分という感じで好感が持てました。ラブラブなえっちシーン、気持ちのすれ違ってるえっちシーン、狂気の域に片足突っ込んでる主人公のオナニーシーンと、エロシーンは計三種あるのですが、それぞれ官能的だったりグロテスクだったり、意図を持ってきっちり描き分けられているのが面白かったな。とりあえずナオミ・ワッツのカットオフジーンズに萌え。あと、ローラ・エレナ・ハリングのシリコン爆乳は一見の価値ありです。そんなわけで、綺麗なおねーちゃん同士の絡みが見たい方と、ベタベタ甘甘でないラブストーリーを探している方にはおすすめの映画ですね。

この映画が合う人、合わない人

ただね、うちの彼女なんかは「話の筋はわかるけど、ナオミ・ワッツの乳以外に見るべきものはない映画」と言い切ってはばからないんだよね、これ。これはたぶんこの人が主人公のようなタイプとは180度かけ離れてるからだと思います。あたしのような、「『バタフライ・キス』を 見たらサイコな主人公に気持ちがシンクロしちゃってしばらくどーんと鬱になった」というちょっと頭の具合が不健康な人にとっては、感動的な泣ける話だったんですけど。

というわけで、ひょっと してこれ、ミスフィット・パーソンの踏み絵として使える映画なのかもしれません。「みやきちがお勧めだって言うからレンタルしてきたけど何これ! つまんないわよ!」と思ってしまった健全な方は、開始後100分ぐらいの絡みのシーンだけサーチで見て元を取ってください、スミマセン。(←林家三平風に額に手を当てながら)