石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

映画『ラヴァーズ・キス』感想

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まあまあだけれど、オリジナル部分には首をひねる所も

5段階評価で3ぐらいはつけられる出来かな。しかしこれは原作の力によるものであって、映画が特に優れているというわけではありません。原作に忠実なところはそれなりによく出来ていますが、映画オリジナルの設定やオチのつけ方には首をひねる所もいくつかありました。

正しい楽しみ方

オムニバス形式で視点が切り替わるところ、ひとつのシーンにいろいろな意味が重なるところはとても面白かったのですが、考えてみたらこれは単に原作をなぞっているだけです。高尾の心中シーンなど映像的に美しいところも原作のイメージそのままで、あまりひねりがありません。

これらを良い方にとれば「原作の雰囲気を再現している」ということになり、悪い方にとれば「新鮮味がない」ということになります。めちゃめちゃに改悪されるよりはマシ、と割り切って観るのがこの作品の正しい楽しみ方だと思います。

演技、映像など

若い役者が多いので、演技の方はそれなりです。平山あや、成宮寛貴、石垣佑磨は下手でした。宮崎あおいと阿部進之介はよかったと思います。そして可もなし不可もなしが市川実日子。ただし、キャスト全員を平均してみると、同じような位置づけの映画『blue』よりははるかにマシなので、そこそこ安心して観ていられます。

作品の舞台となる鎌倉の情景はとても良かったです。「どうだ綺麗だろう」という押し付けがましさのない上品な映像でした。また、人物同士の距離のとり方で愛情の方向を暗示しているところはうまいなと思いました。姉妹の感情のすれ違いや喧嘩の様子についても、どぎつくもわざとらしくもならず丁寧に描かれていて好感が持てました。

ここが残念

この作品をレズビアン映画&ゲイ映画として見る場合、原作の良さを損なっている箇所が二つあります。ひとつは依里子と美樹のキスシーン。もうひとつは、話の後半での緒方の身の振り方。どちらも原作とはかなり異なっているのですが、「ノンケカップルのめでたい大団円に向けて、同性カップルがハッピーエンドになりうるルートは念入りに潰しておこう。こいつらしょせん途中の盛り上げ役だしー」みたいな、嫌な雰囲気を感じました。そこまでの展開ではかなり萌えなシーンもいくつかあっただけに、とても残念です。どうせなら最後までドキドキさせて欲しかったぜ。

その他気になった点

気になった点をいくつか列挙しておきます。

  • 成宮寛貴の顔、ファンデ塗りすぎ。あまりにも厚塗りっぽくて、アップで見ると不気味。
  • 藤井の部屋、オサレすぎ。もっとビンボ臭くないと話が成り立たないのでは。
  • 石垣佑磨、ミスキャストすぎ。表情がわざとらしく、台詞も棒読みで、あの爽やかな高尾というキャラをどうしてこんな風にしてしまったのかと涙が止まりません。
  • 幽霊をしつこく映しすぎ。
  • 青フィルター、くどすぎ。
  • 音楽がところどころわざとらしすぎ。

しかしまあ、上記は、アイドル映画と思えば許せる範囲のうちに入ります。むしろ、漫画の忠実な実写化という難業をこの程度のアラしかない状態で仕上げたのは評価していいでしょう。原作ファンも原作未読の人も一度は観ておいて損はない作品だ、というのがあたしの出した結論です。