石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

PS2ゲーム『アカイイト』(サクセス)レビュー

SuperLite2000 アドベンチャー アカイイト

SuperLite2000 アドベンチャー アカイイト

コンシューマ和風伝奇百合ゲー/レズゲーの最高峰

魅力的なキャラクター、よく練りこまれたシナリオ、緻密な伏線など、どれを取っても一級品です。全部のトゥルーエンディングを見るまで謎解きを楽しめるのも好印象。女性キャラ同士の気持ちのつながりを丹念に追った展開は激しく百合チックで、非エロなのにここまで色っぽい文章やCGを詰め込んであるのが素晴らしい。コンシューマ百合ゲー/レズゲー界最高レベルの力作だと思います。

百合濃度十分!

あちこちで「百合度が足りない」と評されていたのであまり期待はしていなかったのですが、足りないどころか百合全開じゃないですかコレ。そりゃ、惚れたはれたのベタベタの恋愛ストーリーじゃないけど、創り手の「妄想補完カモーン!」という魂の叫びが聞こえるナイス文章&CGオンパレードなんだもん。試しにいくつか引用してみましょう。

ノゾミ「……ふふっ、強情なのね」

桂「ごっ、強情なんかじゃっ」

ノゾミ「いいのよ別に。弱い子よりはそのぐらいの方が好きだもの」

桂「…………」

ノゾミ「ますますあなたが欲しくなってしまったわ」

「桂……」

「サクヤさん……」

本当にいいのかと問う呼びかけに、同じように呼び返して頷くと、サクヤさんの顔がゆっくりと近づいた。

さわりさわりと撫でまわすと、むずかるように身じろぎするのに、それでも嫌といわないのが健気で可愛くて――

上からユメイルート、サクヤルート、葛ルートのとあるシーンなのですが、他のルートもこんな描写であふれています。これをエロいと呼ばずして何と呼ぶ? 台詞といい絵といい、もう、狙ってやってるとしか思えません。さらに、桂とルートごとのメインキャラとの関係はどのシナリオでもかなり濃く、胸をドキドキさせたり頬染めたりともう大変です。これでも百合濃度が足りないって人は、単純明快な大告白だのラブシーンだのがないと頭がついていけない可哀想な人なんじゃないかしら。

和風伝奇要素が生きてます

プロの描写力を見た!

和風伝奇物って、薀蓄の要素が多いだけに、下手をするとただの「調べ物発表会」になりがちなジャンルだと思うんです。実際、資料の引き写しの合間にちょろちょろと台詞と擬音を並べただけの退屈なシロモノを「作品でござい」と発表してる人も多いしね。

でも『アカイイト』は違いました。歴史的事実や伝説、神話などの難しそうな話がこれでもかと出てくるのに、まったく読者を飽きさせないパワーを持っています。薀蓄に退屈するどころかむしろ興味が出てきて、「ちょっと『古事記』読んでみようかな」などと思ってしまったほどです。これは、文章がよく練れていて読みやすいことと、伝説や神話が話の骨組みにがっちりかかわっていること、そして説明役として桂と葛の二人がうまく使われていることによるものだと思います。プロの力ってすごいなあ。

言霊の力

このゲームでは、ある人の本当の名を知ることがその人の秘密を知ることに直結しています。日本古来の言霊信仰を思わせる心憎い演出です。サクヤ、ユメイ、ノゾミ、ケイなど、最初は音でしかわかっていなかった名前が、漢字でどう書くかわかったとたんに「こういうことだったのか」と納得がいくのは快感でした。どんな字で書くのかわかるまであれこれ想像するのも楽しくて、日本人に生まれた喜びをしみじみと噛みしめました。

ルートによって呼び名が変わるキャラがいたりするあたりもうまいです。桂のその人に対する意識や距離のとり方が一発でわかります。敵キャラであるはずのノゾミとミカゲが終始「ちゃん」付けで呼ばれているのも、彼女たちをただの敵役にしないための言霊的配慮だなと思いました。

ADVとしてもGOOD

ここまで「どのルートでもストーリーが破綻をきたしていない」「全ルートを読んで初めて物語の全貌が見えてくる」という要素を満たした作品は、他に類を見ないんじゃないかしら。トゥルーエンドは全部で5種類あり、どれもカタルシスが得られる素晴らしい結末なのですが、ひとつ見ただけではまだ「あの人は結局何だったんだろう?」とか「あの時、本当は何があったの?」みたいな謎が残るので、結果として別ルート攻略に熱中してしまいます。そのへんの伏線の張りめぐらし方が見事ですね。セーブポイントが20箇所と少ない上、ある条件を満たさないと進めないルートが複数あるので、ゲームの難易度自体は割合高いのですが、これぐらいなら許容範囲だと思います。

サクヤさんラブ

個人的に一番気に入ったキャラクターはサクヤさんです。名前が浅間サクヤ、職業がルポライター兼フォトグラファー、という設定に「もしや?」と思ったらやっぱりそうだったので、なおさら惚れこみました。今時「ジャーナリスト」でも「フリーライター」でもなく「ルポライター」というう肩書きを使うあたり、絶対絶対そうだと思ったし、名字が「浅間」で名前が「サクヤ」つったらあの神話が出てこないはずはないもんね。もちろん名前や設定だけでなく、容姿や性格もよかったでんですけどね。ああいう年上キャラって好きだわー。

その他雑感

  • 既読スキップは便利だけど、同じシーンでもルートによって微妙に描写が違うため既読扱いにならず、何度も読まされることがあって結構辛かった。頁送りが遅いのも辛い。
  • 血液ゲージに今いち意味がなかった。
  • 会話に参加してないキャラの表情の微妙な変化までが伏線になってるのには感動。
  • 「アカイイト」というタイトルや、「たいせつなひとが/いなくなってしまった」というキーワードが、ルートによっていろいろな意味を持つのが面白かった。
  • BAD ENDに芸があるのが好印象。「シマイ」とか。
  • 音楽最高。エンディングが特に良かった。
  • ファンディスク出してください!

まとめ

百合ゲー/レズゲーとしても、アドベンチャーゲームとしても素晴らしい出来です。これだけ色っぽく妖しい作品を、厳しいソニーチェックに負けることなくコンシューマで出してくれたサクセスの偉大さをたたえるため、レズゲーマーはこぞって買うべし。