石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

映画『彼女の彼は、彼女』感想

『月の瞳』のドタバタ同居コメディーバージョン

すっごく乱暴な言い方をしてしまうと、これは「『月の瞳』のドタバタ同居コメディーバージョン」だなと思いました。「ある男の妻がレズビアンと恋に落ち、なんだかんだで三人で一緒に暮らすことになる」という変わった設定なのに、変に同性愛賛美やポリガミー(またはポリアモリー)万能主義に傾き過ぎないバランス感覚の良さが面白かったです。

よかったところ

1. 奥さん役のビクトリア・アブリルの裸エプロンがーー!!

あれを見るためだけに買っちゃってもいいんじゃないでしょうかハァハァ。

2. 偏見をちゃんと描いているところ

浮気男ローランの、レズビアンの中年女性マリジョーに対する侮蔑のひどさと言ったら。だって、「メスブタ」とか「男」とか「あんな女じゃ、レズになるしかない」とか言って馬鹿にしまくり、あげくの果てにマリジョーの前でチンコを見せびらかして踊ったりするんですよこの人。ああもう、サイテー。

でも、そういう言動のおかげで、それだけ馬鹿にしている中年ダイクに愛する妻を寝取られるローランの情けなさがどーんと浮かび上がってくるわけです。この構造はすごく面白かったし、こういう描き方ならば侮蔑表現なんて全然気にならないとあたしは思いました。ちゅーか、あれぐらいやってくれないと、ローランが気の毒すぎるしね。

3. ヘテロ男性がやたらと貶められていないところ

もしもこれが「浮気夫は優しいレズビアンに妻を寝取られてしまいました。だからストレートの男なんてダメなのよほほほほほ!」ってところでハッピーエンドぶって終わる話だったら、レズビアンのあたしですら「なんだこのクソ映画」とうんざりすると思います。ところがそうじゃないんですね、この話は。

ローランもローランなりにロリを深く愛していることがわかるシーンがあり、そこからローランがただの薄っぺらい浮気野郎ではなくなっていくという展開が良かったです。あたしでさえも「ローランがんばれ」と思ってしまったほど。当たり前だけど人間の価値はセクシュアリティーや性別で決まるんではなく、その人の行動で決まるはずだから、ヘテロ男性をやたらと貶めないこの展開は嬉しかったなあ。

4. 嫉妬心をきちんと描いているところ

話し合って同居を始めても、いきなり「愛があれば全て解決」なんてことには全然ならないところにニヤニヤしました。3人が3人とも自分勝手で、嫉妬も独占欲もしっかりあるっていうのが人間くさくてとてもいいです。ちょっと話は飛ぶんだけれども、秋里和国の『The B.B.B ザ・ばっくれ・バークレー・ボーイ 』も実はラストシーンの後でこんな展開を見せていたのかも、と思ってしまいました。

今いちだったところ

マリジョーの出て行ったり戻ったりが、ちょっとごちゃごちゃし過ぎてたかなあ。あと、結局日本のことわざで言うところの「○は○○○い」(ネタバレ防止のため伏せます)的なまとまり方をするのはあんまり芸がない気もします(ただ、こちらは最後のオチの意外性によってかなり相殺されていますけれども)。

まとめ

多少ごちゃごちゃしてはいますが、「いちばん大切なのは『本当の恋』に出会ったらなりふり構わず追いかけること」というテーマをちゃんと伝えてくれる楽しいコメディーでした。嫉妬心に悩んだり、「別に複数の人を好きになったっていいじゃないかー!」と思ったりしてる人にお勧め。