石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

映画『Notorious C.H.O.』感想

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ゲイもヘテロもレズビアンも、等しく笑いの俎板に

『アリー・マイラブ』にも出演した人気コメディアン、マーガレット・チョウのスタンダップコメディを収録した映画。相変わらずの、ゲイもヘテロもレズビアンも、等しく笑いの俎板に乗せてしまう芸風が素敵です。10代のドラァグクイーン・アレンとジェレミーの話には、ほろりとさせられた後でめちゃくちゃ笑わされました。「ゲイ男性とヘテロ男性の恋人募集欄の違い」なんてのも良かったし、お母さんの物真似で送る「ダディーのゲイ・ストーリー(a gay story of our daddy)」も、「もしもノンケ男性に生理があったら」なんてところも最高でした。

自分を笑うギャグも最高

もちろんマーガレットは他人だけでなく自分のこともさんざんネタにしています。セックスクラブでの体験の話(『料理の鉄人』ネタのギャグとか出てくんのよ!)とか、「ポルノビデオを借りたまま旅行に行ってしまって、レンタルビデオ屋のおねーちゃんから激しく誤解された」話とかにすげー笑いましたよ。あと、レズビアンのSの女王様の話も良かった。"...and you're not coming up until you are wearing pussy mustache."とかね。pussy mustacheてアンタ!

"America somehow works"

assとかpussyとかfuckとかいう単語が15秒に1回は出てくる(数えてみました)お下劣な語り口にも関わらず、決してシモネタの下品な話「だけ」に終わらないところがとても良かったです。映画冒頭の、9.11についての辛辣なコメントを見てて思ったんだけど、マーガレット・チョウというのは、差別と偏見が横行するアメリカの現状に失望しつつ、それでも「自由」や「平等」というアメリカの理念を信じている(あるいは、信じたい)人なんじゃないでしょうか。だからこそ、この映画後半の自尊心についてのくだりがあんなにも見る人の胸を打つんじゃないかなー。

前作『I'm the One That I Want』の中で、マーガレットは、血尿を出すほどの苦労をしてまで自分の番組(アメリカ初の、アジア系アメリカ人家族が主役のシットコム)を手放すまいとしたのは「60年代に移民でアメリカにやってきてあらゆるレイシズムと差別を経験した両親に、"America
somehow works."ということを示したかった」からだと言っています。実際には残念ながらその番組は打ち切りとなってしまったのですが、それでも彼女は今度はスタンダップコミックという形で"America somehow works."を実現させるべく戦い続けているんじゃないかと思います。その姿は時に痛々しいけれど(摂食障害のエピソードなど、元摂食障害患者のあたしには泣けるもんがありました)、やっぱりすごいし、そこがとても良かったです。

まとめ

エクストリームな下品さとはうらはらに、爆笑のみならず胸を打つ痛みと共感をももたらしてくれる傑作。マーガレット・チョウはコメディアンであるのみならず、ファイターでもあるのだと思います。