石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。

『どうにかなる日々(1)』(志村貴子、太田出版)感想

どうにかなる日々 (1) (Fx COMICS)

どうにかなる日々 (1) (Fx COMICS)

エロティックで風変わりなラブストーリー

エロティックかつちょっと風変わりなラブストーリーを集めた、オムニバス形式の本です。全体的に、とてもよかったです。ちなみにこの1巻にはゲイキャラが、そして2巻にはレズビアンキャラが登場します。

「ありがちでない」のに「ありそうな」話

たとえば表題作のscene 1なんて、偶然知り合ってあそこまでうまく行くとか、元連れ込み宿の家だとか言うのは、かなり「ありがちでない」シチュエーションだと思います。なのに全然ウソくさい話になっていなくて、「ありそうだよな、こういうこと」と思わされてしまうのは、細部の描写がしっかりしているためだと思います。

雨が降り続いてなんとなくアパートに帰らずにいるところとか、ふたりでちんまりと膝を曲げてお風呂に入っているところとか、あんな状況で「おはぎ買っちゃった」とか言ってるところとか、細かいところがいちいちリアルだし、そこがしっかりと読み手の「現実」とつながってくるんですね。だからこそ、十分「ありそうな」話だと感じさせられてしまうんだと思います。

scene 1以外の作品も、ロリとか幽霊とか近親愛とか、一見「ありがちでない」シチュエーションが多いのに、どれも読み手に「ありそうな話」だと感じさせる力を持っているのがすごいと思いました。

ラスト1ページの定型美

p31を読んだときは「どうなるんだろう」と心の底からドキドキして、ページをめくったときは「やられた! こうきたかー!」と唸りました。そのときはまだ、まさか毎回こういう形でしめくくられるとは思ってもいなくて、読み進みながら「あ、またやられた」「まただ! そうかこういうフォーマットなのか!」と楽しませてもらいました。すっきりさっぱりした終わり方だし、定型美があっていいですね。

ゲイ描写が秀逸

これについては後で別項立てて書こうと思ってるんですが、ゲイを扱った「ハッピーなエンド」と「先生のくせに」の2本がとても良かったです。ポイントは、ゲイのキャラクタの内面も、ゲイを理解できないノンケキャラクタの内面も、両方しっかりと描写されていることですね。ちゃんと偏見や暴言も描かれているのに、それが全然嫌な感じじゃないのは、「セクシュアリティと人格を混同しない」という当たり前のことがきちんと押さえられているからだと思います。同性愛者のひとりとして、読んでいてとても安心できる描き方でした。