石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

PCゲーム『エスカレーション-HARD CORE- DVDPG』(電脳CLUB)レビュー

エスカレーション-HARD CORE- DVDPGエスカレーション-HARD CORE- DVDPG

電脳CLUB 2006-04-27
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強烈な悪役が光るSMレズゲー

全寮制女子校で繰り広げられる同性愛&SMの世界を描くエロゲ。面白かったです! まず、美奈子という強烈な悪役が何よりも魅力的ですね。さらに、SMの扱い方の巧みさや、エロくて綺麗な絵、切ない三角関係を描きつつもただの恋愛賛美に終わらないシナリオなど、どれをとっても素晴らしかったです。それから、当たり前だけど男がひとりも出てこないところもよかった。レズゲーとしてはかなり重要ですよね、これは(もちろん、中には『カタハネ』みたいな大例外もありますがー)。

美奈子というキャラクタ

青山美奈子は主人公・はるかの通う学院の美人英語教師。Sの女王様として学院を裏から支配する彼女の魔手にはるかたちがどう立ち向かうか、というのがストーリーの大きな柱なのですが、美奈子はただのヒール役の枠にはおさまらない魅力と存在感を持っています。

美しさ

前下がりのボブにセクシーダイナマイトな肢体、そしてぱっつんぱっつんのボンデージ衣装とやたらインパクトのある美奈子ですが、ぶっちゃけ美人なんですよね。はるかと舌を絡め合うキスシーンの一枚絵など、それはそれは綺麗で、思わず見とれてしまいました。

アンチ恋愛至上主義のダーク・ヒーロー

恋や愛とでも言うつもり…くだらないわ。もっと強い絆で結ばれたくないの、薫と…

という本人の台詞からもわかる通り(注:薫ははるかの想い人)、美奈子は愛だの恋だのに一切関心がありません。関心があるのは、主従という「もっと強い絆」のみ。つまり美奈子のSM行為は単なる暴力衝動の発散ではなく、快楽という鎖で相手を縛って「絆」を形成することなんですね。そしてまた、そのためのアメとムチ(これは両方の意味で)が超絶うまいんですよこの人。いわばアンチ恋愛至上主義のダーク・ヒーローとでも呼ぶべき、魅力的なキャラクタだと思います。

SMの扱い方

「支配」と「服従」

Sがただ身勝手に暴力をふるって自己満足するだけのSMではなく、全編これきっちりと「支配」と「服従」に焦点を当てた展開であるところがよかったです。もちろん激しい責めのシーンもたくさんあるのですが、たとえばはるかが最初に美奈子に呼び出されるシークエンスなんて、脱がされもせず犯されもせず、ただ制服のまま土下座させられるだけなんですよ。それなのに、拝跪願望のある人ならこれだけでごはんが3杯いけそうな、実に妖しい場面に仕上がってるんですよこれがまた。Sの仕事って「いかに暴力をふるうか」ではなく、「いかにMのマゾ心をくすぐるか」だと思うんですが、このゲームはそこのところが本当によくできていると思います。

SとMとは表裏一体

サディズムとマゾヒズムが表裏一体であることはよく知られていますが、この作品ではそれがシナリオの分岐にうまく生かされています。あっと驚くようなルートにも矛盾がまるでなく、「これはこれでありうるよなー」と納得させられました。バッドエンドでさえもきちんと辻褄が合っているし、おまけにサービス精神満点でえちいんですよ、どれも。

切ない三角関係

SMゲーとしてだけでなく、実は切ない学園恋愛物としても楽しめるようになっているところが素晴らしいと思います。はるか・未希・薫の三角関係には、「どこの百合漫画ですか」と思ってしまうような繊細なシーンがきちんと織り込まれており、読んでいて楽しかったです。特に未希の言動がどのルートでも(未希ルートでさえ)超切なくて、のたうち回りながらプレイしました。

そして、たとえ彼女たちの恋が成就してさえ、「愛の力が悪のSM女王を倒しました。めでたしめでたし」的な頭の悪そうなオチになっていないところもナイス。全ルートを見ればわかりますが、このゲームで一貫して描かれているのは「絆を求める人々の姿」であり、その絆がいわゆる恋愛という形態をとるか、主従という力をとるかはあくまで偶然(または運命)+本人の意思なんですね。ハリウッド的な単純な恋愛賛美に陥っていない、非常にユニークなゲームだと思いました。

その他いろいろ

  1. 着衣にこだわりのあるエロ描写が良かったです。最初からやたらと全裸にひんむいて大股開かせるのではなく、あくまでタイトル通りに少しずつエスカレートしていくところがえちくて良いと思いました。着衣エロ好きな方はぜひどうぞ。
  2. 実はバカゲーとしても面白いです。伝説の「早くイカせた方が勝ち」という勝負とその前後のシークエンスには、腰が砕けるほど笑わされてしまいました。
  3. DVD-PG(DVDプレイヤーやPS2などのゲーム機でプレイできるタイプのゲーム。セーブが一切できず、ゲーム中に表示されるパスワードをメモしておいて続きからプレイする)ということで操作性が心配だったのですが、ほとんどストレスなく遊ぶことができました。パスワードはたったの2桁の数字で、「こんなに簡単ならもっと早くやればよかった」と後悔したりしました(ドラクエの『ふっかつのじゅもん』みたいに複雑なやつなのかと思ってた……)。
    • ちなみに、セーブができない都合上かPC版より分岐点が少なくなっている上、好感度などの要素も無くなっているようですが(※ルートやエンディング自体の数は変わりません)、それはそれでかえって遊びやすかったです。
  4. なんだかんだ言ってSM要素がとても強いゲームなので、SM自体が苦手な方は回避推奨です。あと、お道具や爆乳キャラが苦手な方も。注意事項はそれぐらいかなあ。

まとめ

青山美奈子というダーク・ヒーローがとてもいいし、SMゲームとしても切ない青春ものとしても楽しめる逸品でした。DVD-PGだからといってプレイせずにおくにはもったいない傑作だと思います。