石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『ぼくは、おんなのこ』(志村貴子、エンターブレイン)感想

ぼくは、おんなのこ (Beam comix)

ぼくは、おんなのこ (Beam comix)

百合作品「sweet 16」が秀逸。ユキさん主役の短編もあり

百合漫画『青い花』(太田出版)が大ヒット中の志村貴子さんによる初期作品集。とてもよかったです。

描きおろしの「sweet 16」は、女性の家庭教師に恋をしている女の子の話です。かなわぬ恋だと思いながら、先生からのプレゼントにドキドキしたり、失恋した(おそらく)先生をそうっと包み込むようにして慰めてあげながら

先生「女の子 やわらけー」
女の子「うん 先生もね」

なんて会話をしたりしてるところがすごくいいですね。こういう皮膚の接触感覚(やわらかいとか、あったかいとか)がきちんと伝わってくる百合作品って好きだなあ。だって本当に違うんだよ女の子(または女の人)の感触は! ヤローの固くてごつい体(『いや、その固くてごつい体こそいいんだ!』っていう指向/嗜好があることは重々承知しておりますがー)とは大違いなんだよ!

他に、『放浪息子』(エンターブレイン)に出てくるユキさんがピンで主役を張っている「花」もおすすめ。ユキさんの凛とした美しさもさることながら、P135左下のコマと、最後のコマの文がすんごく心に響きました。

ちなみに表題作の「ぼくは、おんなのこ」は性別の入れ替わりを扱ったもの。『放浪息子』の原型がここにあるのかもしれません。ただし、1997年発表とやや古い作品だけあって現在とはずいぶん絵柄が違うので、そこだけ注意が必要かも。話自体は、理詰めでガチガチに起承転結をつけてオチに持って行くことはせず、「印象深い景色を切り取って提示してみせる」という感じのもので、他の志村作品にも共通する雰囲気があると思いました。