石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『西城秀樹のおかげです』(森奈津子、早川書房)感想

西城秀樹のおかげです (ハヤカワ文庫 JA)

西城秀樹のおかげです (ハヤカワ文庫 JA)

こんなに笑えるクィア小説があったのか!?

SFという土台の上に「エロス」と「笑い」をぎっしりと詰め込んだ爆笑短編集。作者さんがバイセクシュアルなだけあって、両性愛・同性愛・被虐趣味・加虐趣味などのクイアな要素が積極的かつ肯定的に描かれまくっていて、とても楽しいです。同性同士の性描写はとても細やかでエロティックなのに、お話の中に必ず抱腹絶倒のギャグが仕込んであるところが好きだなあ。とにかく、どの作品も、「こんなに笑えるクィアSF小説があったのか!?」という楽しい驚きの連続でした。

収録作の中では「テーブル物語」がいちばん好きです。官能的な彫刻をほどこされたテーブルにまつわるお話なのですが、入れ子になった物語構造と、最後に登場するキャラクタふたりの妙にエロティックな関係が良いです。でも、「悶絶! バナナワニ園」(タイトルだけでも『参りました』と土下座したくなりますが、中身も負けず劣らずとんでもなくて面白いですよー)も捨てがたいし、『エロチカ79』の生徒会長さん(袴田めら著『最後の制服』の如月先輩をも彷彿とさせるヘンタイっぷりがすばらしいキャラ)も好きだし、いやいや表題作もやはり……などと考えていくと、結局、どれも好きすぎて選べなくなってしまいそうです。

とにかく、どの作品も、「げらげら笑っているうちに『正常vs異常』という対立軸がぐらつき出し、気づけばもう『森奈津子の世界』というパラレルワールドに引きずり込まれている」という感じなのが最高ですね。「暗くて重い同性愛小説はもう飽きた」って方に、強烈におすすめです。共にこれを読んで能天気に「ワーイ・M・C・A」と踊ろうではありませんか。