- 作者: 吉富昭仁
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2006/01/27
- メディア: コミック
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リアルで手ごたえのある「未来」
百合うんぬんを別にして、まずSFとして非常に面白い作品です。「未来的な戦争の廃墟」と「昭和の日本の街並み」がハイブリッド化した不思議な世界をここまでリアルに表現してみせる描写力には、最初から最後まで圧倒されまくりました。登場人物たちが、その不思議な背景を当たり前のものとして淡々と生活しているさまもいいですね。銀色のピチピチスーツを着た未来人がチューブのハイウェイをエアカーで走るような安直なSFなんかより、はるかに手ごたえのある「未来」だわ、これは。
ストーリーはオムニバス形式になっていて、最後まで読んで初めてこの世界の成り立ちやキャラクタの行動の意味が全部わかるようになっています。可愛らしいキャラクタたちにそぐわず、お話自体は骨太で、しっかりしたテーマがあります。全部読んでからもう一度表紙を見返すと面白いですよ。この表紙絵は、単なる「少女に銃を持たせると萌え~」なんていう安易な表現ではないんです。なぜこの少女は銃を持っているのか? なぜ、日本人らしい外見と服装なのに、目が青いのか? なぜ、背景には奇妙な廃墟と平凡な日本の家並みが混在しているのか? いったいこれはいつの時代なのか? ……等々、全てがこのお話の中身とがっちり結びついた表現になっているんです。うまいなあ、何もかも。
なお、肝心の百合要素の方もよかったです。お話全体の主人公「YUI」が、あっけらかんと女のコ好きなところを発揮している(好きな後輩の裸の胸に嬉しげにすりついて殴られたり)ところも楽しかったし、美里先生や留美と清美など、もっと陰影のある想いの描写も見事でした。そんなわけで、SF漫画としても百合漫画としても「買ってよかった!!」と心の底から思える作品でしたよ。満足満足。