石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『夢みたいな星みたいな』(あらきかなお、メディアワークス)感想

夢みたいな星みたいな (電撃コミックス)

夢みたいな星みたいな (電撃コミックス)

学園百合。前半今いち、後半はナイス

全8話の表題作と、短編「守ってさんかくHEART」が収録された1冊です。後者は結局「女子校に入り込んだ男性キャラが活躍する話」なので(百合要素もないわけではありませんが)、ここでは前者についてのみ述べてみたいと思います。

「夢みたいな星みたいな」は、百合漫画としてわりと評判の良い作品だと思いますが、前半は正直言ってあまり好きになれませんでした。episode1から4ぐらいまで、「天然で無神経なあぽろがちろるの嫌がることを強引に実行し、結局ちろるが折れる」というパターンの繰り返しなのがちょっといただけません。人の物に勝手に触るとか、泳げない相手をいきなり崖から海に突き落とすとか、甘い物が嫌いな人の口にケーキを突っ込むとかいうのは、ただの無神経だとしか受け取れませんでした。あぽろのそんな言動を「無邪気で可愛い」と解釈するか、「わがままで押し付けがましい」と解釈するかで、前半の評価はまっぷたつに分かれることでしょう。

しかし。お話の焦点がちろるの「ツン」から「デレ」への変遷に移っていく後半は、すごくよかったです。ちろるの心の揺れが非常にうまく描写されていますし、

「ばっかじゃないのっ、女の子同士で。共学じゃないから寂しさ紛らわすためにレズごっこ? ムナシーわね」

なんて台詞(ちろるの)をガツンと入れてくるところもユニークで面白いと思いました。何よりも秀逸なのは、最終話のクライマックス。「この制服のネクタイのデザインは、このためにあったのか!」と感動に打ち震えました。ちょっと『処女宮』のユキルートを思い出したりもしましたね。エンディングも幸せそうで、よい感じでした。なお、このクライマックスでは、先述の「レズごっこ」という言葉がまた出てきて、しかもそれが非常に大きな効果を上げています。ここでは伏せておきますので、気になる方はぜひ読んでみてください。

そんなわけで、後半が前半のマイナスポイントを相殺しているので、評価が非常に難しい作品だと思います。個人的には5段階評価で3か、3の上といったあたりでしょうか。前半でのあぽろの言動を「無邪気で可愛い」と解釈できる人ならば、当然もっと高い評価になるとは思うのですけれど。