石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『街角花だより』(こうの史代、双葉社)感想

街角花だより (アクションコミックス)

街角花だより (アクションコミックス)

ちょっとレトロで優しい百合漫画

お花屋さんを舞台に繰り広げられる、マイペースな店長と「ゆり以上に美しい女」りんさんの優しい百合物語。トーンを一切使わない絵柄や独特の台詞回しはちょっと高野文子を思わせるレトロな感じで、ふだんキラキラした萌え絵の百合漫画ばっかり見慣れた目にはかえって新鮮でよかったです。

この本におさめられている表題作「街角花だより」は、明石版(1995年初出)と日和版(2007年初出)のふたつ。明石版の最終回「百合色の人生」には、ボツになった第1案とそれを描き直した第2案の両方が掲載されています。実は第1案の方がラブラブ度が高いので、「こっちのままで良かったのに」と思わんでもないのですが、最後であんまりあざとくしてもこの穏やかなお話には合わないような気もしますし、これはこれでよかったのかも。そこに至るまでの過程で、りんの店長への気持ちはじゅうぶん表現されていますしね。(さりげないのにラブくて熱くていいんですよ、これがまた)

ちなみに日和版の方も、優しくて静かでそれでいて愛に溢れたラストでした。ステレオタイプな大告白だのキスだのセックスだの(いや、ステレオタイプじゃなければ大告白もキスもセックスも歓迎なんですがー)、ましてや「禁断を乗り越える勇気」なんかひとつもなくても良質の百合漫画は描けるのだというお手本みたいなエンディングだな、と思いました。春先の陽だまりでほっこりひなたぼっこしてるみたいな気持ちにさせてくれる、よい漫画でございました。