石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

「アオイシロ―青い城の円舞曲―(第1話)」感想(原作:麓川智之、漫画:江戸屋ぽち、一迅社「コミック百合姫」2007年09月号掲載)感想

コミック百合姫 2007年 09月号 [雑誌]

コミック百合姫 2007年 09月号 [雑誌]

読みやすく面白い『アオイシロ』コミカライズ版

おお、これは面白い。百子と保美の出会いが百子視点で描かれているのですが、キャラの性格や外見、言動などがきっちり描き分けられており、とても読みやすかったです。特に百子の魅力を再確認いたしました。構成もうまくて、導入部や、百子と保美が仲良くなるプロセスなんてとてもよかったです。

キャラの描き分けについて

  1. 髪の毛の色と質感
  2. 口調
  3. キャラのポーズや動き
  4. デフォルメ

……などを使ってキャラを描き分けるのがたいへん巧みな漫画家さんだなあと思いました。特に3と4が素晴らしい。まず、「百子の動きをすべてダイナミックかつオーバーアクション気味に描く一方で、保美のポーズや動き方を非常に抑制のきいたものに描く」というコントラストのうまさに惚れました。これによってふたりの性格の違いが一目瞭然になりますし、地の文のたとえば「西洋人形」なんて表現が、より強い説得力を持つようになっていると思います。

デフォルメについては、特に百子が最高です(あのエアギター!)。全てのキャラを脈絡無く3頭身にしたりするのではなく、あえて百子だけにギャグ役をふることで、百子の魅力とか、保美との性格の違いとかがはっきり表されていると感じました。

構成について

冒頭のカラーページは綺麗で、かつ謎めいた雰囲気もあり、つかみはばっちり。その後のモノクロページですぐに「いつ・誰が・どこで・なぜ・どのように」そういう状況になったのかが一発でわかるようになっており、読み手が謎の解けた快感とともにすんなりと物語世界に入っていけるうまい構成だなあと思いました。

また、百子が保美と仲良くなるプロセスにも説得力があってよかったです。特に百子の「実家のほうには○○○○○○○○?」(ネタバレ防止のため一部伏せます)なんて、すげー殺し文句だと思いました。こういう変化球って、あけすけな友情宣言だの愛の告白だのよりよっぽど効きますよねー。

まとめ

キャラにもお話自体にも魅力がある、よい作品でした。続きがとても気になります。これまで「各作家の単行本は買ってもコミック百合姫自体は買わない*1」という主義だったので、これからどうしようかと悩んでいるところです。

*1:レビュー用に買いまくった単行本だけでも部屋が狭くてかなわんのに、雑誌まで買ったら収納スペースが明らかに足りないため。