石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『夜空の王子と朝焼けの姫』(袴田めら、一迅社)感想

夜空の王子と朝焼けの姫 (IDコミックス 百合姫コミックス)

夜空の王子と朝焼けの姫 (IDコミックス 百合姫コミックス)

コミカルだけどちょっと切ない百合短編集

袴田めらさんによる、コミカルで切ない百合短編集。面白かったです。特に印象深かったのは、「彼女の猫は夢の番人」「カラス女」「キリンの首は長すぎる」あたり。

「彼女の猫は夢の番人」について

女のコ同士だからどうだとかこうだとかいう色眼鏡なしに、ただ「恋」の痛みを静かに描き出す感じなところがとてもよかったです。「百合姫セレクション」掲載時の感想でも少し触れたのですが、この作品の主人公が感じている痛みや切なさは、別に女同士の関係限定のものじゃなくて、どんなセクシュアリティの人にもありうることだと思うんですよね。

「カラス女」について

藍黒色のセーラー服の転校生の立ち姿が美しくて、絵柄もキャラの性格も全然違うにもかかわらずPCゲーム『アトラク=ナクア』(の初音姉様を思い出してしまったりしました。袴田めら作品にしては珍しく暴力シーンがあったりもして、短いけれど鮮烈な印象を残す作品です。

「キリンの首は長すぎる」について

起承転結の「転」の部分で、好きな相手に「私と○○○○○○○○?」(伏せます)とすっぱり言ってしまう主人公が最高。最後のコマの表情にもウケました。あと、パンダもよかった!

その他

可愛らしい絵柄でありつつ、セックスありの関係をきちんと描いた(全年齢向けなので、表現はソフトですが)お話が多いところが面白いと思います。それも、性行為を無意味に美化するんじゃなくて、タラシの人だの、好きな人へのあからさまな欲情だのがしっかり出てくるのがいい感じ。「肉体関係まで行ったら百合じゃなくてレズだ、気持ち悪い」みたいな同性愛嫌悪に満ちた意見もある百合業界で、こうした欲望込みの関係を鮮やかに描いてくださる作家さんもおられるというのはとてもありがたいことです。

まとめ

可愛くてコミカルなだけでなく、女の子同士の恋の切なさや欲情をも表現してみせているナイスな短編集だと思います。ちなみに上では書ききれなかったけど、繰り返されるキーワードが効果的な表題作も面白かったですよ。