石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

小説『武林クロスロード』(深見真、小学館)感想

武林クロスロード (ガガガ文庫)

武林クロスロード (ガガガ文庫)

深見汁満載の武侠風アクション小説。

深見汁満載の武侠風アクション小説。ストーリー自体はわりとオーソドックスなのに、細部が全然普通じゃない! レズビアニズム(これについては後述)に加え、アポテムノフィリアまたはアクロトモフィリア、アベイショフィリアにカニバリズムの要素まで入ってるんですよこれ。あと、ちょっとだけどサディズムやウロフィリアの要素もあるかな。(※ネタバレを避けるため、それぞれの用語についての解説はしません。興味がおありの方は各自検索なさってくださいね)

とにかく「タブー? 何それ?」って感じの怒涛のエログロバイオレンスの世界なので、相当に読み手を選ぶと思いますが、あたしには面白かったです。

女性同性愛要素について

イラストがRebisさんだという点で、わかる人にはすべてわかってしまうと思います。はい、そういう小説です。どちらかと言うと「指と舌! 指と舌!」派であるあたしが、それでも平気でこのお話を楽しめたのは、そういう話だという予備知識があったことと、「磨鏡」という設定の巧みさによります。『武林クロスロード』の世界では、女性同士の交合を「磨鏡」、男性同士のそれを「龍陽」と呼ぶ、という設定があり、「レズビアン」とか「同性愛」とかましてや「百合」などの用語は一切出てこないんです。

用語が違うということは、概念が違うということ。おおげさに言ってしまえば、文化の枠組み自体が違うということです。おかげで、女戦士たちの交わりを、現代日本におけるレズビアニズムとはまったく違う文脈で眺めることができ、特に嫌だとか変だとかは感じませんでした。助かったー。

好きなキャラなど

中国語話者の友人が言うには、「日本人は三国志だと孔明あたりが大好きなんだけど、中国人は張飛が好きなんだよね。怪力で豪快で、でかくて重い武器をぶんぶん振り回しちゃうような豪傑がウケるんだ、中国では」ということですが、あたしも実は張飛タイプが大好きなので、今のところオンリンが一番好きです。もう「お姉様」ものの時代は終わった。これからは「姉者」ものよ!

その他好きなところ

武器! とにかくいろんな武器が次から次へと絢爛豪華に出てくるところが楽しかったです。まるで『グリーン・デスティニー』でミッシェル・ヨーが次々と武器を変えながら戦いまくるシーンのような贅沢さだと思いました。

欲を言うと

欲を言うと、もう少し遅めの展開で、細部がより緻密に描写されているともっと嬉しかったかも。全体的な印象が、「非常に大きな枠組みのお話の、ほんの序章部分」といった感じの1冊なので、あまりにさくさく話が進んでしまうとなんだかもったいない気がしてしまうんですよね。

まとめ

戦うお姉さんたちの筋肉は全盛期のベブ・フランシスも真っ青だし、それでいてありえないほどの巨乳だし、暴力シーンでは生首だの臓物だのが飛び散りまくってるし、エロシーンは「これで18禁じゃないのはおかしい」と物議をかもすほど濃いし、おまけに○○○○要素満載でただのレズビアン/百合ものとも違う……という、恐ろしいまでに「ついて来られる人だけついて来い!」型の小説だと思います。読んでいる間じゅう、作中の言葉をもじった、

「ここが武林の分かれ道。読むか読まぬか、はまるか逃げるか」

というフレーズが頭の中にぽんと浮かび、最後まで離れませんでした(笑)。しっかり読んで、続きが気になってしまったので、2巻もぜひ買おうと思っているところです。