石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『W・E・T』(武藤鉄、フランス書院)感想

W・E・T (Xコミックス)W・E・T (Xコミックス)
武藤 鉄

フランス書院 2001-03
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エロだけでなく愛もぎっしり

18禁エロ漫画短編集。11本中5本(※『灰は灰に』も含めるなら、6本)に女のコ同士の関係が登場するのですが、どれもとてもよかったです。緊縛や陵辱を扱った濃厚な作品がほとんどでありながら、どの作品にもエロだけでなく愛もぎっしり詰まっていることに驚きました。さらに、高い構成力や女性キャラの可愛いらしさ、男性キャラたちが皆魅力的であることなどもポイント高いです。汁(白濁液にしか見えない。よく見ると違うみたいなんですが)まみれの表紙絵にドン引きする前に、まず中身を読んでみるべき傑作だと言えましょう。

愛、または許しと解放

ここで言う「愛」とは、一言で言うと「相手が望むことしかしない」ということです。それはたとえば「迷子の仔猫」のリオとカナンのSMセックス中の会話に端的に表れていて、エロいわラブいわで悶絶しそうになりました。

「迷子の仔猫」に限らず、『WET』におけるSM行為は全て、女のコの側が心の奥で望んでいたことを引き出してあげるという形で描かれています。で、それは許しであり解放であり愛だと思うんですよ。SMだからと言って単純に女のコが暴力を振るわれて終わりではなく、逆に終始大切にいつくしまれている(行為の上では責められてるんですが)ところがとてもいいと思いました。

構成の妙

「HELL OR HEAVEN」がその代表。途中のどんでん返しに目を見開かされ(あの表情! すげーイイですホント)、意外で深い結末まで、一気に駆け抜ける感じで読まされてしまいました。楽しかったー。また、前述の「迷子の仔猫」や「パピヨン」など、伏線がオチでしっかり生かされている作品が多いのもすばらしいと思います。ちなみにここで挙げた「HELL OR~」「迷子の~」「パピヨン」は、どれも♀♀物ですよ。

女性キャラの可愛らしさ

想像力を駆使し、精神を集中させ、存在するはずのない女のコを抱きよせ、その手をにぎるように、髪をなでるように、頬にくちづけするように、紙の上に写し込んでいく。それを「才能」と呼べるなら、ぼくはまちがいなく「才能ある作家」と言えるでしょう。(言い方かえれば「ただの変態」(笑))

と作者さんご自身があとがきで書いておられますが、本当に愛情こめて紙の上に写し込まれたキャラばかりだと思います。表情やからだの線の柔らかさなど、ほれぼれしました。これが「ただの変態」なら、ビバ変態です。

男性キャラの魅力

個人的にはクレイ様の懐の広さとVサインに惚れました。その他の男性キャラも皆、好きな人を大切にする/できる人ばかりで、好感度大です。全体的に、「男性は汚くて女性は綺麗」とか、「男性は鬼畜で女性は哀れな被害者」みたいな、エロ漫画にありがちなステレオタイプが皆無なところが面白いですね。

まとめ

女のコ同士の絡みもエロも愛もSMもぎっしり詰まった力作だと思います。ヘテロ物でもレズビアン物でも、終始女のコが大切に愛されているところがとてもよかったです。