石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『ガールズ ガーデン』(へっぽこくん、久保書店)感想

ガールズ・ガーデン (ワールドコミックススペシャル)ガールズ・ガーデン (ワールドコミックススペシャル)
へっぽこくん

久保書店 2000-03
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「誰でもいいから女のコとセックスしたい」的な欲望主体のレズビアンエロ漫画

18禁レズビアンエロ漫画。個性的な絵柄がとても可愛いし、11本の収録作が全て女のコ同士のお話だという点は非常にありがたいのですが、あたしにはあまり合いませんでした。「この人が好き」という強い感情よりも「女のコ全般が漠然と好きで、誰でもいいから女のコに都合よく欲望を満たしてもらいたい」というどこか身勝手な欲望の方にウエイトが置かれた一冊のように思える、というのがその理由です。個人的には、「女のコが好きな女のコの感情というより、ただの女日照りの男性の感情を描いてるだけなんでは?」と感じてしまって、あまりノれませんでした。

どこか身勝手な欲望

まずは「委員長のお仕事」「委員長のお仕事2」について。この2つのお話の主人公(委員長)は、まさに「女のコ全般が漠然と好きで、誰でもいいから女のコとセックスしたい人」なんですね。それだけならまだいいんですが、彼女がひょんなことから女同士のセックスにありつく「ヒーリング部」なる部がただの男性向け風俗の焼き直しであるところにげんなり。「眠っている(という設定で演技をしている)女のコに何をしてもいい」とか、「お風呂で女のコ2人にかしずかれて愛撫される」とか、要するに前者はイメクラで後者はソープの2輪車じゃん。相手の意思とか愛情とかどうでもいいんじゃん。

また、ヒーリング部の部長の数々の発言も、「どこの百合ヲタ男性ですかあんた」という感じでついていけませんでした。全体的な印象としては、委員長が風俗初心者の男性で、部長は風俗マニアの男性(あるいは風俗店の店長かなー)といった感じ。せっかく♀♀物を読もうと思って買ったのに、蓋を開けてみたら少女の皮をかぶった野郎ばかりだったとはがっかりです。

「委員長のお仕事」以外について

「委員長のお仕事」以外のお話でも、相手の意向をまったく考えずに自分の欲望を満たそうとするキャラはてんこもりです。たとえば、

  • 拾ってきた猫耳少女に「相手はネコなんだし……何をしても大丈夫っていうかHやりまくりOK!?」と自分本位な欲望をたぎらせる女
  • 盲目の少女をだましてトイレシーンを覗いて興奮する女
  • 自分がかつてレイプされたからといって今度は自分が女のコをレイプする女

など。いずれもご都合主義的に相手がよがり出してめでたしめでたしとなるのですが(最後のやつだけちょっとダークなオチでしたけど)、基本的に相手に対して失礼すぎて、読んでいてあまり楽しめませんでした。

同じ身勝手なエロでも、こういうのならいいんだが……

同じ「相手の気持ちより己の欲望優先」、というシチュエーションでも、たとえば、(漫画じゃなくてゲームのキャラの話になってしまいますが)『エスカレーション-HARD CORE- DVDPG』の美奈子とか、『サフィズムの舷窓~an epic~』の○さん(未プレイの方のため伏せます)とかならありだと思うんですよ。で、美奈子や○さんと「委員長のお仕事」の委員長と違いは何かというと、「相手との絆を作りたいという強い欲望があるか、ないか」です。そこが違うんです。

「都合よくヤらせてくれればそれでいい」というのと、「この人こそを支配したい」「この人に自分の記憶を刻み付けたい」と狂おしく願うのとでは雲泥の差ですよね。人によってレズビアンエロ物に何を求めるかは違うと思いますが、あたし個人は女性同士の強い絆(恋愛感情なり、『支配―服従』関係なり、可愛さあまって憎さ百倍なり)への希求が皆無なものは苦手なので、この『ガールズガーデン』はあまり合いませんでした。

補足

そうは言っても、「この人が好き」という要素があるお話もないわけではないんですよ。「えすえす」とか「がんばる君に」とかね。先ほど挙げた盲目の少女が出てくる「GIRLS ANNIVERSARY」も、途中からは一応恋愛物になっていくことですし。けれど、それらには前述のマイナスポイントを相殺するほどのスペシャルな輝きはありませんでした。「えすえす」はなしくずしに好きでもない相手を交えた3Pになってしまうところがいまいちだし、「がんばる君に」は漫画としての構成(コマ配置など)がぎこちないし、「GIRLS~」はやはり相手のハンディキャップにつけ込むところが後味悪いと思います。

まとめ

好き感情よりも身勝手な欲望の方にウエイトを置かれた作品が多く、個人的には合いませんでした。世間では評価の高い作品らしいのに、残念です。