石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『えむの王国(1〜2)』(中平凱、芳文社)感想

えむの王国 1 (まんがタイムKRコミックス)

えむの王国 1 (まんがタイムKRコミックス)

これは良いヘンタイ漫画

これは良いヘンタイ漫画(誉め言葉)ですね。国民が皆M(マゾ)な王国カスティーナ(通称『えむの王国』)の数少ない普通人の王女シャルロットの苦悩を描くコメディなのですが、SMネタ以外にも百合だのゲイだのロリだの女装だのと多様なセクシュアリティが好き勝手に横溢しまくっているパワフルな世界観がステキです。中には百合とMが、または百合とSが共存しているキャラもいて、どちらもやたらとエロティックな雰囲気があってよかったです。

読みながら思い出したこと

この作品を読んでいて思いだしたのが、以前友人に連れていってもらった新宿二丁目のお店のこと。ゲイバーでもレズビアンバーでもましてや観光バーでもないMIXの飲み屋さんだったんですが、カウンターに座るやいなやお店のお姉さんにカジュアルに聞かれたのが、「お客さんはSですかMですか?」だったんですね。(※ちなみにSMバーにもあらず)

「レズビアンですかノンケですか?」とかじゃないんですよ。つまりその空間においては人間が同性が好きだったり異性が好きだったりするのはあたりまえで、とりたてて分類する必要もあんまりなくて、どっちかつーと「SかMか」の方が関心事である、ということなんですね。それがなんだか風通しよくて、新鮮な感じでした。そのお店でレズビアンもバイセクシュアルもゲイもノンケもわいわい言いながら飲んでとても楽しかった記憶を、この『えむの王国』を読んでいてふと思いだしたりしていました。

百合キャラについて

シャルロット王女の小間使いにしてドMなシンシア、カスティーナの敵国ダラス王国(通称『えすの王国』)のドSツンデレ王女メディア、メディアの警護係ライザに恋するミーシャ、その名も「百合の国」出身のエリィなど、枚挙にいとまがないほど豊富な百合キャラがいて楽しいです。しかも全員強烈にキャラが立っており、ただ女のコが女のコに萌え萌えするだけの平板な百合漫画とは一味もふた味も違うと思いました。

個人的にはシンシアがいちばん好きですね。「全年齢向けでここまでやっていいんかい!?」とツッコミたくなるほどギリギリの言動(『姫さまのパス』とかね……)が多いのに中身はしっかり乙女だったりするあたりがたまらんです。

まとめ

様々なセクシュアリティがカオスとなって存在する中にも個性的な百合っ娘がたくさん登場する、楽しいコメディでした。3巻にも期待です。