石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『アップル・デイ・ドリーム(1)』(城之内寧々、一迅社)感想

アップル・ディ・ドリーム 1巻 (1) (IDコミックス 百合姫コミックス)

アップル・ディ・ドリーム 1巻 (1) (IDコミックス 百合姫コミックス)

ヘテロ女子同士のじゃれ合いに見えてしまう

アパレル業界を舞台とした百合4コマ。絵も綺麗だし、可愛い女のコや巨乳への愛にも目を見張るべきものがあるのですが、個人的にはあまり合いませんでした。「異性愛中心主義の香りがする」「百合というより単なるヘテロ女子同士のじゃれ合いに見えてしまう」というのがその理由です。

繰り返される異性愛中心主義

以下、それぞれp. 37とp. 105から引用。

(引用者注:わがままな人が好きという薫(女性)に、店長が『うちのデザイナー(男性)とかは?』と聞いた後で)

薫「でも あいつ男じゃん ないない!」

由真・永山・店長「その理由おかしいでしょう」

(引用者注:下半身に節操がないデザイナー(男性)の話を聞いて由真が薫の身を心配するシーンで)

薫「平気平気! あたし野郎に興味ないし! あっちも女に興味ないし」

由真(無表情で)「それはそれでどうよ」

薫と由真はともに女性で、このお話のメインカップル(のはず)。にもかかわらず、由真自らが「同性を好きになるのはおかしなことだ」という異性愛中心主義的なメッセージを繰り返し発信し続けているというのは、ちょっと興醒めです。また、わざわざ百合作品で「同性愛を否定することでオチをつける」というパターンを繰り返さなければならない理由もよくわかりません。そんなに同性同士は駄目だというのなら、最初から男女話にしとけばいいのに。

「百合」というより「ヘテロ女子のじゃれ合い」

薫は由真本人が好きというより、どちらかというと「巨乳」「ツンデレ」という要素にばかり反応しているようで、いまいち想いの底が浅そうに思えてしまいました。一応、第5話~6話では由真が薫の「想像や創作力をシゲキしてくれる」(p91)こと、「感性を認めてくれる」(p97)ことなどが語られてはいるのですが、それ以外の部分での巨乳萌え/ツンデレ萌え話のウエイトが大きすぎるような気がします。おかげで薫は、女のコが好きな人というより、単なる「巨乳グラビアアイドル写真集を好んで買うタイプのヘテロ女子」または「ヘテロなのに巨乳好きを広言して人の乳に触りたがったりする女性」のような存在としかあたしの目には映りませんでした。

で、実は、さんざん好き好きアピールをしてる薫より由真の方がラブい言動を取ったりしているのですが(たとえばp59の『お宝を助けてるんです…っ 薫さんじゃありませんからっ』とか)、その由真にしてから前述のように要所要所で異性愛中心主義をアピールしてるわけですから、お話になりません。まとめると、薫にしろ由真にしろ、百合というより「ヘテロ女子が『女のコが好き』ごっこをしてじゃれ合っているだけ」に見えてしまうんですよ、この内容だと。それが、この作品が合わなかった最大の理由ですね。

まとめ

百合とかラヴとかいうよりも「ヘテロ女子による女のコ萌え」を扱った作品だと思います。読み手によって合う・合わないが分かれそうです。