石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

PCゲーム『恋夏~れんげ~』(JOKER)レビュー

恋夏~れんげ~ 初回限定版恋夏~れんげ~ 初回限定版

JOKER 2007-08-31
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

レズゲーというより「なんちゃってレズの自己正当化ゲー」

オムニバス形式の全4章のうち、第3章が「皐月」と「立夏」(りっか)というふたりの女のコ同士のお話となっています。が、はっきり言ってこの3章、レズゲーというより壮大なる「なんちゃってレズの自己正当化ゲー」、あるいは「なんちゃってレズの言い訳大全」にしか見えません。または「女性同性愛への偏見陳列集」と言っても過言ではないかと。ここまで堂々とカップルの両方をなんちゃってレズに設定してホモフォビアを垂れ流しまくった百合/レズビアン作品というのも珍しいと思います。絵だけは可愛いのですが、内容は超絶くだらないです。

このへんがなんちゃって&ホモフォビック

1. 同性愛を思春期の発達過程扱い

オープニングからして「蛹のように、恋する季節を待つ二人の少女」なんて言い回しが使われている時点で嫌な予感はしたのですが、思った通り、同性愛を思春期の発達過程扱いする噴飯ものの内容でした。要するにこれは、以前「みやきち日記」で書いた"Riddle Homophobia Scale"で分類するところのレベル3の同性愛嫌悪がてんこ盛りのゲームだと思っていただければ間違いありません。

2. 皐月はちんこスキー

序盤からして、皐月が男女エロ漫画で見たちんこを思い浮かべつつ大興奮で自慰してます。ヘテロじゃんどう見ても。

3. 同性愛を「趣味」呼ばわり

まず、皐月と立夏のこの会話をご覧ください。

立夏「せっかくだから、悪い虫がつく前にわたしがいただいちゃおっかなあ」

皐月「い、いやいやいや、あたしにそんな趣味ないから……!」


立夏「それは、残念」


皐月(地の文)……ったく。あんたにはそういう趣味があるのかと問い詰めたいわ。あると答えられたら嫌だから、これ以上は追及しないでおこう。

このシーンに限らず、『恋夏~れんげ~』第3章の中では同性愛はひたすら(嫌悪されるべき)「趣味」扱いされています。これって、要するに「異性愛こそ本質・王道で、同性愛は唾棄すべき個人的嗜好」と言ってるのと同じで、つまりは超ホモフォビックなんですけど。しかも「そんな趣味ない」「あると答えられたら嫌」なんて言ってるくせに、この後、立夏とのセックスは楽しみまくるんですよ皐月は。つまり、ヘテロが同性愛を見下しつつ、同性を便利なバイブレータorダッチワイフ代わりに使って喜ぶという最低のゲームなわけですよこれは。

4. 炸裂する「男女セックスだけが本当のセックス」論

以下は両方とも、さんざん立夏とのセックスを楽しんだ後の皐月の独白。

あたしは、本当のセックスを知る前に女の子と身体を重ねてしまった。

女の子同士のセックスは気持ちいい。けど、たぶんこれって男の人とする行為なんだろうな。いつになるかわからないけど、あたしが本当に好きな人が出来たら、その時は本当のセックスをしよう。

何ですかこのクソくだらない異性愛至上主義は。全同性愛者(含むあたし)に喧嘩売ってんのか。つか、そんなに男としたけりゃ男としろ。勇気がなくて男とヤれないヘタレ異性愛者の分際で、偉そうに同性愛を見下してんじゃないわよっ。

ちなみに、「男女セックスだけが本当のセックス」論を後生大事に信奉してるのは立夏も同じで、皐月の身体に当人の同意なく触ることを「女の子同士だから別にいい」として正当化しようとする台詞が何度も何度も出てきます。その根っこにあるのはつまり、「男女の関係だけが重要なんだから、女のコ同士はカウントしない」っていうヘテロによくあるレズビアニズム蔑視なわけで、読んでいてすごく不快でした。

5. 「なんちゃってレズ」テイストも炸裂

まずは、さんざんセックスしてお互いに好きとかなんとか言い合った後、しばらく立夏と会えなかったことを寂しがる皐月に対する立夏のこの反応をご覧ください。

立夏「それにしても、サッキーなんかマジだなぁ……」
そういう風にしたのはわたしのせいだと思うけれど、ちょっとサッキー必死すぎない? 私たち、お互いのことを好きだって言ってるけど、付き合ってるわけじゃないんだよ? ましてや女の子同士なんだよ?

ぐはー!! レズビアンを自慰の道具代わりに使い捨てて平然としている現実の「なんちゃってレズ」の皆さんがよく言う台詞そのまんまですよこれは!! いろいろ思い出して痛恨の一撃を受けたよ!!

んで、この女ひでーとか思ってたら、話の終盤になって皐月も同じぐらいの「なんちゃって」度を発揮しやがるじゃないですか。

皐月「よくよく考えたんだけど、立夏のことを恋人としてずっと想い続けていく覚悟があるかって言われると、心のどこかで食い違うんだよね」

これがもし男女話だったらどうかと考えてみてください。ひと夏じゅうセックスしまくって、デートもして、キスもして、さんざん「好き」とか言っておいて、しかる後に相手に向かってしゃあしゃあと

  • 「付き合ってるわけじゃないんだよ?」
  • 「想い続けていく覚悟があるかって言われると、心のどこかで食い違うんだよね」

……なんて言い放つのって、かなり嫌な奴のすることだと思いませんか? 単に女同士だというだけで、そんな奴らの乳繰り合いに「蛹から蝶になる過程」みたいなポエミーな美化を施そうとしたって、無理がありすぎるってもんですよ。こんなの、ただの欲求不満の身勝手女同士の『なんちゃってレズVSなんちゃってレズ』(『エイリアンVSプレデター』的なノリで)でしかないですよ。

まとめ

レズゲーというより、ただの『なんちゃってレズVSなんちゃってレズ』ゲー。「同性愛嫌悪を垂れ流しまくりつつ、同性同士のセックスをオナニー代わりに利用する(一部の)クソヘテロの生態」が見たい方以外にはおすすめしません。