石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『暁色の潜伏魔女(2)』(袴田めら、双葉社)感想

暁色の潜伏魔女 2 (アクションコミックス)

暁色の潜伏魔女 2 (アクションコミックス)

いろんな愛の形が炸裂

魔法学校を舞台にしたほんわかファンタジー第2巻。1巻に引き続き、異性愛・同性愛(女のコ同士の)・姉妹愛といろんな愛のかたちが炸裂していて楽しかったです。同作者さんの『最後の制服』(芳文社)『夜空の王子と朝焼けの姫』(一迅社)のような百合一色のコミックも大好きですが、こうして三色そぼろ丼のようにいろんな味を少しずつ楽しめるお話もまた楽しくて、たまりません。

さまざまな愛のかたちについて

この巻の特に前半は異性愛色が強く、ロベルト→暁、暁→秋也、時子→秋成、秋成→夜という4組の片想い模様がずんずん展開されます。男女のキスシーンもあったりして、正直「これはこれで面白い(みんなけなげで可愛いし)けど、このままただの思春期ヘテロ物になっちゃうんだろうか」と危惧したりもしたんですよ。が、忘れちゃいけない、私たち百合好きには智(主人公の先輩で、女のコ好きの女のコ)という頼もしいヒーローがいたんでした。

1巻ではギャグ担当のヘンタイ(褒め言葉)キャラとしての色彩が濃かった智ですが、この巻ではちょっと切ない役回りも演じていたりして、いいんですよこれがまた! それでいてコミカルなところもそのままで、ますます智が好きになりました。

ちなみに姉妹百合については、「あくまで『姉妹愛』の範疇であって、恋愛やエロスとはまた違うっぽいなー」と思いながら読んでいて、巻末の「暁色の潜伏魔女【特別編】」で心臓がでんぐり返るかと思いました。なななな何ですかあの淫靡さは! あれはちょっと嬉しいサプライズでしたね。

その他

異性愛のことを「ノーマル」と称する台詞が何度も出てくるところは残念です。「ノーマル」とはそもそも「正常」という意味なので、こういった表現はすなわち「異性愛こそ正常、それ以外は異常」という社会通念を再生産しちゃうんですよね。いや、現実の異性愛者の多くが「異性愛」とか「ヘテロセクシュアル」とかいう言葉になじみがなく、深く考えずにノーマルノーマル言ってるってことはわかるんですよ。でも、せっかく女のコ同士の愛情をていねいに描いた作品なのに、わざわざ「異性愛こそ正常」という偏見から来る表現を使わなくてもいいのにとがっかりしました。

まとめ

異性愛・同性愛・姉妹百合とさまざまな愛のかたちが楽しめる、贅沢な一冊でした。時々ふっとただようエロスや切なさもまた良かったです。異性愛が時に「ノーマル」と称されているところだけは残念ですが、まだ我慢できる範囲かな。3巻も、とても楽しみです。