石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『花のいろ』(すえひろがり、実業之日本社)感想

花のいろ (マンサンコミックス)

花のいろ (マンサンコミックス)

エロいのにラブくて明るい学園百合漫画

「代々の女女カップルの性の営みを記録する」という伝統を持つ映研を舞台とする、コミカルな学園百合物。Amazonにすすめられてテケトーに購入したのに、意外や意外、これが大当たりでした。非18禁なのにとことんエロいし、それでいて男性目線の「オカズでござい」というノリではまったくないし、ちゃんと愛にあふれてるし。あと、「指と舌」重視でありつつもそれ以外を全否定したりしないところや、思春期の疑似同性愛へのシニカルなまなざしを持ちつつ、それだけでは終わってしまわない視野の広さもとてもよかったです。

『花のいろ』のここがすごい

1. 非18禁なのにとことんエロい

毎回必ず絡みありです。しかも描写が丁寧で繊細。股間描写だけに終始せず、ちゃんとキスしたり抱きしめあったりそれ以外のスパイス(野外とか)を使ったりしてるところがよかったなあ。オーガズムの描き方も、野郎の射精みたいに潮を吹くなんていうナンセンスな(※多くの人が誤解しているようですが、潮吹きと快感の度合いに相関関係はないし、そもそも潮吹く人自体そんなにいないはず)表現を使わずに、女のコのイキ顔や体の震えでしっかり表現されているところに感動しまくりました。

膣に棒状のものを突っ込まないとエロだと思えない&なんか射精を思わせるクライマックスがないと気に入らない男根主義者の皆様には物足りないかもしれませんが、「んなもんが見たかったら最初からヘテロ物を見るっつーの」とお思いの方には、こちらの方が絶対絶対エロく感じられると思います。

2. 愛情もたっぷり

ここがすんっっごくいいです! このお話にはたくさんの女女カップルが登場しますが、「お姉さまと妹」だからイチャイチャするわけでも、「めくるめくレズの世界へ引きずり込まれたから」寝るわけでもなく、ただその人のことが好きだからつきあう、そして欲情するという路線が徹底してるんですよ。特にいいなと思ったのは、第8話で描かれる桃花の恋の予感(と妄想)のところ。欲望と好き感情がないまぜになったあの描写や、「ていうか今の何」と我にかえって赤面するところなど、可愛くてえちくて最高でした。

3. 視野の広さ

まず、セックストーイの扱い方が面白いなあと思いました。レズビアン漫画・百合漫画におけるエロって、「ろくな愛撫もなしにいきなり双頭ディルド突っ込んで喘ぎ出す」みたいな極端な器具志向か、「この世にセックストーイなど存在しないかのごとく、ひたすら『指と舌! 指と舌!』モード」かのどちらかに傾きがちだと思うんですね。が、『花のいろ』は、基本的には指と舌路線でありつつも、セックストーイを全否定していないし、かといって女のコの器具に対する抵抗感・嫌悪感を都合よく無視したりもしていないんですよ。このへんのバランス感覚が絶妙で、楽しかったです。

また、思春期のいわゆる「なんちゃってレズ」の扱い方もよかった。まず、付き合っていた女のコに男が出来て捨てられたことのある桃花のこの台詞(pp154-155)をご覧ください。

結局…思春期にありがちな同性への疑似恋愛の感情
若気の至りだったのよ
女の子同士なんてどうせいつか後悔することになるんだから

で、それを聞いた紫乃の台詞(p155)が、こう。

…あの それって同性異性関係なくないですか
失恋して もう恋はしたくないっていうそれこそありがちな話ですよね
(引用者中略)ダメだったら次の相手を見つければいいじゃないですか

これはエポックメイキングだ、と思いました。思春期限定の「なんちゃってレズ」状態で適当に女のコを絡ませて終わりの百合物はざらにあります。「いつかは別れてしまうだろう」という予感を漂わせて、「なんちゃって」であることを暗に肯定しさえする百合作品もあります。さらに、桃花のように「なんちゃって」を嫌悪する台詞が出てくるレズビアン作品もよくあります。でも、「『なんちゃって』に捨てられても、だからと言って別に女同士の関係自体に絶望する必要はない(次の人を見つければOK)」というところまで達観した作品というのは初めて見ました。この視野の広さ、すげーわ。

ちょこっと残念だったところ

一部のキャラの見分けがつきづらいような気がします。(でも、絵自体はとても上手い描き手さんだと思うし(女体の描き方とかなー)、慣れればちゃんと判別もつくので、ほぼ無問題)

まとめ

エロいしラブいしスカッとする視野の広さもあるしで、とても楽しい漫画でした。買ってよかったです!