石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『BLUE DROP-天使の僕ら(2)』(吉富昭仁、秋田書店)感想

BLUE DROP ?天使の僕ら?(2) (チャンピオンREDコミックス)

BLUE DROP ?天使の僕ら?(2) (チャンピオンREDコミックス)

クィアなエロティックSF、堂々の完結

「異星人アルメによって女に改造された親友ケンゾーとのセックスを強いられる主人公ショータ。ショータを愛するコトコ(♀)とシンイチ(♂)をも巻き込んだ逃避行は、果たしてどうなる!?」という、ジェンダーもセクシュアリティもゆらぎまくりの物語の完結編です。いやあ、よかった! 百合や異性愛やゲイネスのどれかひとつを規範に祀り上げたりしないストーリーがまず気持ちいいし、ショータとケンゾーの絆も、巧みに仕込まれた伏線の数々も、そして納得のエンディングもみんなみんなよかったです。

ちなみに前回と同じく、サイドストーリーは100パーセント百合話。アホで切なくて愛があって、これがまたいいんですよ。というわけで、いろんな意味でおすすめの最終巻となりました。

『BLUE DROP-天使の僕ら(2)』のここがすごい

1. 特定のセクシュアリティを規範に祀り上げない

アルメが女性だけで愛し合う種族なだけあって、この漫画には女性同士のセックスシーンがたくさん登場します。けれども、だからといって、「百合こそ至上」みたいに盲目的にレズビアニズムを崇拝することはなく、むしろそうした女性同性愛の規範化に対して批判的なまなざしを保っているところがいいなあと思いました。

断っておきますが、だからと言って異性愛を標準視して同性愛を下に見るというわけではないんですよ。そうではなくて、「女同士こそ正しい」という発想も「男女こそ正しい」という発想も等しくアホらしい、ということをはっきりと打ち出したお話だと思います。詳しくは、男嫌いの異星人「ラザエル博士」とショータとのクライマックスでのやり取りをご覧ください。性愛を性別で切り分けることのしょうもなさをここまでクリアに表現した漫画を、あたしは他に見たことがありません。また、異星人の作った学校についての描写なんかも、特定の性的指向(ここでは女性同性愛ですが)を「これこそ自然」と教え込んで強制することの気持ち悪さがよく表れており、とても良かったと思います。

2. ショータとケンゾーの絆がいい

これはねー、泣けますよもう。愛ですよ愛。あとがきで作者様が

ショータとケンゾーが(ネタバレのため6文字削除)かどうかは不明です。…が、個人的には(同5文字削除)ような気がするのですが、いかがでしょう。

と書いておられますが、あたしはこれに完全に同意です。ていうか、「あとがき」を読む前に、本編ラストのすがすがしくも切ない1ページを見た瞬間に、既にそう思いました。ええ話やー。

3. 伏線とエンディングが最高

1巻での驚愕の設定や展開に、実は意外な側面があったことが次々に明らかにされ、「うわ、やられた!」「またやられた!」と唸らされっ放しでした。特に、『BLUE DROP―吉富昭仁作品集』で多用されていたあのガジェットが、ここでも使われていたことにびっくり。さらに、それによって復活したとある決め台詞が、アホらしくも愛にあふれたエンディングに登場することに2度びっくり。実に楽しい物語構成だったと思います。

4. サイドストーリー「特別編 天使の悪戯2」もいい

最高にアホで最高にエロいのに、同時に愛ある百合話だったりするところが泣かせます。全部巨大タコが悪いんです、ええ。

まとめ

ジェンダーやセクシュアリティの意味をゆるやかに解体し、その一方できっちりと「愛」を描いてみせたユニークなエロティックSFでした。コミカルなのに切ないラブストーリーとしても、すんごくおすすめです。