石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『アオイシロ―青い城の円舞曲―』(江戸屋ぽち[画]、麓川智之[原作]、一迅社)感想

アオイシロ―青い城の円舞曲― (IDコミックス 百合姫コミックス)

アオイシロ―青い城の円舞曲― (IDコミックス 百合姫コミックス)

百子の切なさが光るサイドストーリー

まいった。やられた。雑誌掲載時に第1話だけ読んで、後は単行本待ちしていたこの作品、こんなにも切ないラブストーリーになるとは思わなんだ。特にお話の最後を締めくくる描き下ろし短編「prelude」がたまらんです。どれぐらい切ないかと言うと、胸を押さえて外に飛び出して小高い丘の頂上まで駆け上って『ちっくしょー!!』と絶叫したくなるぐらい。あああああ。

『アオイシロ―青い城の円舞曲―』とは

2008年5月15日発売のPS2百合ゲー『アオイシロ』の漫画版です。百子と保美が新入生だった頃の、つまりゲーム本編より時間軸が前のサイドストーリーなので、ネタバレが気になる方でも大丈夫。全4話で構成されており、語り手は、

  • 第1話:百子
  • 第2話:保美
  • 第3話:梢子
  • prelude:百子

と、毎回切り替わっていきます。が、お話全体全体の焦点は一貫して百子の片想いにありますね。彼女の痛みとけなげさが、この漫画の最大のポイントだと思います。

百子について

ゲーム内ではあくまで元気でおバカなサブキャラクタを務めている百子ですが、この作品ではそんな彼女の意外な側面を見た感じでドキドキさせられてしまいます。いや、漫画の方でもひたすらパワフルで面白おかしい(あのエアギター!)人であることは変わりないんですよ。でも、だからこそ百子の片恋のつらさがより引き立っていて、いいんですよこれが。充分にメインを張れる、深みのあるキャラクタだなあと思いました。

表紙(特に裏表紙!)もすごいですよ

中身だけでなく、表紙もすごいですよこの作品。表だけ見ると、よくある百合漫画の表紙でしかないでしょう? が、実は、裏表紙までつながった一枚絵になってるんです、これ。全体図を見れば、単なる可愛いだけの百合話でないことは一目瞭然。見ているだけで切なすぎて床を悶え転がってしまいそうです。

その他いろいろ

  • 梢子の白馬の王子様っぷりにびっくり。ゲームの方でもこの王子っぷりは発揮されるのでしょうか?
  • でも、梢子をそういう存在として描きつつ、安易な「下級生にキャーキャ言われてモテモテなお姉さま」的な場面をひとつも入れないところはさすが。女のコ同士の関係への偏見のなさについては、『アカイイト』以来の伝統がきっちり守られている感じですね。

まとめ

悶絶モノの切ない片想い話。ゲーム版に興味がある人だろうとない人だろうと、等しく万人におすすめです。帯に書かれている、

PS2ゲーム『アオイシロ』本編前の隠されたラブストーリー。プレイ前に読めば楽しさ100倍(当社比)

という文句に嘘はない、とここで断言してしまいます。