石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『少女風景―スカートの中の願望―』(木村屋いづみ、三和出版)感想

少女風景‾スカートの中の願望 (SANWA COMICS No.)少女風景‾スカートの中の願望 (SANWA COMICS No.)
木村屋 いづみ

三和出版 2008-04-05
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レズビアンエロスというよりバイセクシュアルエロス

『学級レディチコちゃん!』『Video Letter』の作者木村屋いづみさんの18禁エロ漫画です。男性の登場率が高く、しかも男性とのセックスを好むキャラが多いので、レズビアンというよりバイセクシュアル寄りの漫画ですなこりゃ。さらに、露出と凌辱と近親姦の要素がかなり多いため、それらの属性のない方にはきついかと。

ただし、非常に面白いのが、ページの大半を占める男女エロが、実は女性同士の関係を成立させるための「きっかけ」になっているというお話も少なくないことです。そういう意味では、本作は「『とにかく男女エロを描かなければならない』という縛りの中でアクロバット的に女女関係も入れてみた意欲作」と呼ぶことができるかも。

女女関係ありのお話はこんな

「彼女2分のイチの2千ジョウ」「彼女2分のイチ」「彼女2分のイチ+2分のイチ」「彼女2分の弐」(連作)
お互い好き合っている(でも告白前の)「千奈子」と「深雪」のカップルに男性主人公が割り込む話。それぞれの弱味を握って「バラされたくなければ」と凌辱しまくるというありがちなパターン。結局3Pハーレム展開に至りますが、同時に千奈子と深雪の両想いも成立します。
「あの空の向こう側」
父親や兄から性虐待を受けている女のコ同士が、互いの存在に救いを見出す話。ラストはテンプレ「レズの悲劇」系のややダークな展開。
「密室のアイドル」
露出願望のお話。女のコ同士の絡みあり。ただしふたりともバリヘテ。
「クラス写真の彼女」
これも露出願望のお話。途中までは完全に男女エロで、ラスト1ページだけ突然♀♀展開(ただしエロ無し)に。最後までヘテロ展開にすることもできたのにあえて女性キャラを持ってきたあたりに作者さんの心意気を感じます。
「少女風景」「少女風景II」
これも露出願望のお話。恥ずかしい秘密を同級生「相沢しおり」に知られた主人公「佐倉愛里」が体で口封じをするというストーリーで、意外にもラストでは女のコ同士のラブラブカップル成立。愛里は男性も好きなキャラなので(男性との絡み妄想が大量に出てきます)、これがレズビアン/百合漫画かどうかと言われると判断が難しいところですが、あれだけラブいエンディングならこの際もう何でもいいです。
冒頭にも書いたんですが、全体的に男性による凌辱(妄想含む)が女のコ同士の関係を成立させるきっかけして働く作品が多いところが面白いです。「彼女2分のイチ」シリーズの男性主人公がいい例で、彼は表面的には性を搾取する存在でありつつ、実はただの恋の仲介役に過ぎなかったりします。なんと顔すら描かれず、手とチンコしか画面に出てこないという念の入りよう。『少女風景』シリーズも、ページの大半を占める男女エロは実は愛里の妄想に過ぎず、実際に行われるのは愛里としおりの女性同士のセックスのみ。こうした「表面だけ見ると男女エロ主体、深読みすると男性はただの添え物」という二重構造はちょっと面白いですね。

まとめ

「男女エロ要素を山ほど盛り込みつつ、女のコ同士の関係もどうにかお話に潜り込ませる」という離れ技に挑戦した1冊だと思います。ただし、男性による凌辱のシークエンスがとても多いため、あまあまいちゃラブ派や「百合に男はいらん」派の方には向きません。商業誌の限界についていろいろ考えさせられる作品でした。