石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『シュガーはお年頃(1)』(二宮ひかる、少年画報社)感想

シュガーはお年頃 1 (ヤングキングコミックス)

シュガーはお年頃 1 (ヤングキングコミックス)

昭和歌謡に乗せて送る、少女と少女のバディもの

陰湿なジョセーシャカイになじめない女子高生「畑中恵子」と「浅見椿」の絆を描く思春期もの。いいなあこれ、百合云々を抜きにしてもめちゃくちゃ面白いです! 一歩間違えばやたら暗くもなりかねない話を主人公恵子の熱唱する昭和歌謡が絶妙に救っているところが楽しいし、何より、恵子と椿のキャラがいいんですよ。ちなみにストーリーは恋愛ものというより女のコ同士のバディもの寄りなんですが、ところどころに「これはひょっとして恋!?」みたいなドキドキ感があり、色っぽい絵柄もあいまって、読んでてとても楽しかったです。

ジョセーシャカイになじめない少女ふたり

女性的なるものとは何ぞや。湿っぽい同調圧力か、陰口か、それとも芸能人やら化粧やらの浮ついた話題か。母性か、優しさか、はたまた性欲か。男性のヘゲモニーに対するやり場のない怒りか。それとも豊かなおっぱいか。この漫画は、それらを全部登場させた上で、周囲の女子高生ワールドとのズレを感じている少女ふたりの結びつきを生き生きと描いていきます。恵子は素朴な元体育会系娘、椿は凛と立ってる一匹狼という違いはありますが、どちらも「女性であること」と格闘している青臭さが可愛くて、かつ、いじらしいです。

周囲の女子高生の陰湿さをきちんと描いている分、一歩間違ったらすごーくベタな暗い話にもなりかねないと思うんですよ、これ。ところが全然そうはならない。ひとつには毎回恵子が熱唱している昭和歌謡がギャグとなってうまくお話を温めているってこともありますし、もうひとつ、ベタな話と見せかけて綺麗にボールひとつ外してみせる絶妙のコントロールが効いてるってこともあります。特に恵子の将来の夢の話なんて、どうなることかとハラハラさせておいて、実にいたいけなところに着地するんですよ。あれはもう本当にすごい。参りました。

これは友情? それとも恋?

結論を先に言っちゃうと、恋というより友情寄りの話だとは思うんですよ。でも、ところどころの色っぽさと熱情は、そんじょそこらの百合ものよりはるかに光っていて、思わず目を奪われるほどです。
たとえば、友達になる以前、椿に見とれる恵子の反応(p41)。

バカあたし 何隠れてんだ? ってゆーかこのドキドキ? もしかしてもしかして……恋!?

ちなみにこの台詞は直後の「――なんてネ。そーいう展開はない」という独白によって軽やかに否定されはするんですけれども、その後も

  • 「不敵な笑みにちょっとクラクラしたり」(p62)
  • 「シクラメンのかほり」を歌っていて、唐突に出会いのときの椿の姿を思い出してドキドキしたり(p107)
  • 椿との会話に有頂天になり、「アンコ椿は恋椿」と熱唱したり(p126)

てな具合で、一種恋にも近いような熱情がしっかりと続くんですよね。そこがすごく楽しかったし、第5話の扉絵(恵子と椿のサクランボ口移し)に代表されるのびやかな色っぽさなんかもたまりません。ここまできたらもう全然恋愛ものになんてならなくてもいいから(いや、なればなったでそりゃうれしいけど)、恵子が椿を包み込んで愛してあげるお話になっていくといいなと勝手に思っています。恵子のあの立派な乳の使い道はそういうことじゃないかと思うんだがどーか。

とは言え

椿は男性経験ありですし、恵子も処女とは言え「セックスしたあ〜〜い!!」(むろん、男性と)と元気に叫ぶ(ただし、すごく可愛い上にユーモラスなシーンなんですけど)程度にははっきりとした性欲があります。男女間のエロスというものを一切回避したい百合好きさんには、あまり合わないかも。

まとめ

可愛くていたいけな、少女と少女のバディもの。ふたりの間の恋に近いような熱情が楽しいし、漫画としてもすんごく面白いです。おすすめ。