石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

PCゲーム『その花びらにくちづけを 愛しさのフォトグラフ』(ふぐり屋)レビュー

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ふぐり屋
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ラブラブあまあまな良質百合ゲー

同人18禁百合ゲー『その花びらにくちづけを』シリーズ第4作です。第2作『その花びらにくちづけを わたしの王子さま』の続編なのですが、恋の甘さや美しさはそのままに、前回あったわずかな欠点をきれいに解消した快作となっています。惜しむらくはコスプレ要素がやや陳腐なことですが、それも結局ラストの名場面の伏線となっていたのでこの際、無問題。なお、いらん苦労をしなくてもすぐにラブシーンにたどりつけるというこのシリーズ特有の親切設計も健在で、よかったです。

1. 甘さと美しさについて

『花びら』シリーズならではの「男なし、器具なし、ふたなりなし、鬱展開なし」「相思相愛でひたすらラブラブいちゃいちゃ」という路線は今回も健在。ちなみに、

学生モデルでもある紗良は仕事で学校を休みがち。
逢えない時間が、二人を切なくさせる。

……というパッケージ裏のあらすじ文から、「ひょっとして、このシリーズにしては珍しく、些細な行き違いから喧嘩になったりするんだろうか」と思ったのですが、全くそんなことはなし。逢えない淋しさから思わずテレホンセックスしちゃったりしている楓と紗良ですが、喧嘩も誤解もなく終始あまあまラブラブです。そうでした、これが『花びら』なんでした。こうした波乱少なめのストーリーを物足りないと思う向きは他のゲームをやればいいんであって、これはこれですごくいいと思うんですよね。
あと、絵の美しさについては、今回も言うことなし。キャラ絵の品のあるエロさもよかったし、やわらかい色調の背景も物語の雰囲気に合ってて素敵でした。余談ですが、こんなに可愛らしい絵柄のゲームなのに、さりげなく野外(これはいつもか)とか放尿とかの要素があるところも面白かったです。

2. 『わたしの王子さま』のわずかな欠点を解消

シリーズ第2作『わたしの王子さま』のプレイ時に感じた欠点は、

  • エロシーンにたまに妙な描写が混じっている
  • 楓に今ひとつ華がない

ということだったんですけれども、本作ではそんな欠点はまったくなし。Hシーンの描写も繊細でしたし、楓の魅力の見せ方もうまいなと感じました。特に後者は、単なる外見のイメチェンではなしに、サブタイトル通りに「写真」を使って王子様っぷりをアピールするというところが心憎いです。地味なお下げの眼鏡委員長姿のままでも楓はじゅうぶん魅力的だとわかる、うまい演出だなあと思いました。

3. コスプレ要素とラストの名場面について

今回はコスプレセックスのシークエンスがいくつかあるのですが、内容は

  • メイド服
  • 巫女装束
  • 猫耳

といったもので、どれもありきたりな印象は否めません。ところが、これらのコスプレは実はラストの名場面につながっており、正直あのラストのためならもう陳腐だろうと何だろうとかまわないと思いました。楓がクライマックスのあのシークエンスで

「いつもの私なら断っていたけれど、巫女装束を着たり猫耳をつけてから、抵抗が薄れたみたい」

と言うのなら、巫女も猫耳もどんと来いです!
エンディングの詳細は伏せますが、ずっと一緒にいようという意思が感じられる、愛情いっぱいの結末でした。絵柄的にもとても可愛いかったです。鬱エンドやなんちゃってレズエンドがお嫌いな方は、こういうゲームをプレイされるといいと思います。

4. 親切設計について

お話は基本的に一本道なので、いらん分岐潰しをする必要がありません。とってつけたようなバッドエンドもありません。必死になってフラグ立てをしなくても、ごく簡単にいちゃいちゃシーンやエロシーンにありつくことができます。

これってすごくありがたいと思うんですよ。身もふたもない話をしてしまうと、ストレスに耐えながら理不尽な分岐をひとつひとつ潰すぐらいなら、さっさと現実の女のコとちゅーでもセックスでもしちゃった方が早いですもん。もちろん、「複雑なゲームを長時間かけて攻略したい」というニーズもあるのはわかりますが、複雑=良質とは限りませんし、廉価でサクッと楽しめる『花びら』シリーズみたいなものもないと困ると思うんですよね。

まとめ

シリーズ4作目とあって、横綱相撲と言っていいほどの安定感のある作品でした。可愛らしさもラブ度もオチも、いうことなしです。これまでの3作が気に入っている方にも、今作から初めて購入を考えている方にも、等しくおすすめ。