石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『千夜伝説』(きみおたまこ、フランス書院)感想

千夜伝説千夜伝説
きみお たまこ

フランス書院 1998-04
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桜と桃の姉妹レズエロ漫画

18禁エロ漫画。同作者さんの『眠りつづけるお姫様』にも登場する「桜」と「桃」の姉妹百合が10篇中6篇を占めています。器具使用が多めでちょっとSM入ってるところと、ただの「プレイ」ではなく根底に愛があるところは『眠りつづける(略)』と同じ。時間軸ではこちらの方が先なので、まずこの作品を先に読んだ方がわかりやすいかもしれません。

桜と桃の馴れ初め(?)、あるいは姉妹愛と家族愛について

姉妹で馴れ初めってのも変な話ですが、要するにふたりが初めてセックスした頃のお話なんですねこれ。実体験しか描けない漫画家の姉・桜が担当さんから「たまにはレズものを」と言われて妹の桃を誘惑する、というのが初Hのいきさつなんですが、話が進むごとに桃から桜への想いがクローズアップされていき、最後に返歌のごとく桜から桃への愛が描かれてきれいにまとまっています。最終話で桜のつくった珍妙な料理を食べてなごむ桃の姿には家族愛なんかもしっかりとあり、単にエロだけ/ヤるだけのお話じゃないところがすごくいいなと思いました。

エロ要素について

前段で「単にエロだけ/ヤるだけのお話じゃない」と書きましたが、エロ部分もみっちり描き込まれてますよ。いきなり放尿から始まってペニバン・拘束・媚薬にアナルパールにバイブレータにクリキャップと、さまざまな行為のオンパレード。ただし変なペニス信仰は皆無だし、「指と舌」描写もしっかり入っていて、ヘタレなレズエロ漫画にありがちな「女同士による男と女ごっこ」路線では全然ないです。

特筆すべきは、桜も桃も非処女であるとはっきり示されていること。「百合レズものは処女同士じゃないと嫌」派の方はお気に召さないかもしれませんが、あたしはこれ、かえってリアルでいいんじゃないかと思いました。だってねー、そもそも非処女じゃなければ入らないわよあんなセックストーイなんて! あと、セクシュアリティって、そうそう性別だけで「100パーセント同性だけが/異性だけが対象」って割り切れるものでもないと思いますしね。「普段はヘテロセクシュアルだけど、お姉ちゃんだけは別格」みたいなのも、かえって愛が深くて萌えですし。

その他のお話について

桜と桃シリーズの他には、ふたなり物の「桜 散る散る」1篇と、男女物の「れんな&あきらシリーズ」が3篇収録されています。属性のない方はご注意を。

まとめ

桜と桃のルーツがわかる、エロエロな1冊。荒唐無稽なようでいてどこかリアル感もあるところと、姉妹の間にしっかり愛情があるところがとてもよかったです。エロありの姉妹百合がお好きな方は、ぜひ。