石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『お熱はかって』(上杉陽子、フランス書院)感想

お熱はかってお熱はかって
上杉 陽子

フランス書院 1996-02
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単なるエロと思わせておいて後半シリアス

18禁エロ漫画。収録作「お熱はかって…」「天使のブラ」「アンジェリーク(前・後編)」が、血のつながらない姉妹「すず」と「真名」のラブストーリーとなっています。単なるいちゃいちゃエロ話だと思わせておいて、後半で意外とシリアスな展開になっていくところが興味深いです。

「お熱はかって…」「天使のブラ」について

この2篇ではすずと真名はカップルだということしか明かされず、エロもわりとテンプレ的です。あらすじはこんな感じ。

「お熱はかって…」
すずと真名のテレホンセックスを描く話。表題そのままに体温計を使った行為が登場するものの、最終的には指が活躍。
「天使のブラ」
すずが真名にブラを買ってやるお話。店員に向かって姉妹と名乗っているが、それが本当かどうかはこの時点ではわからない。お約束的に試着室でのエロあり。
テレホンセックスにせよ試着室でのHにせよ、エロ漫画ではそれほど珍しい展開でもありませんよね。姉妹という設定も、ここまででは特に生かされていません(実際、カップルであることをごまかすための方便かと思ったぐらい)。もしこれだけで終わるのなら「どこかにもう少しひねりが欲しいかも」と思っていたと思うんですが、その「ひねり」は実はシリーズ後半にありました。

「アンジェリーク(前・後編)」について

この2篇ですずと真名の過去が明かされます。実のところ「天使のブラ」までのお話は行き当たりばったりの単発ストーリー風味だったので、後半でここまでシリアスな展開を見せることには驚きました。いろいろ乗り越えた上での甘いハッピーエンドもよかったです。

ただ、一部に「性虐待は連鎖する」的な社会通念をわりと簡単になぞってしまう描写があるところにはちょっとひっかかりを覚えます。特にそれが「いやよいやよも好きのうち」というもうひとつの社会通念と結びついて表現されてしまっているところが残念です。「好きな人を無理やりレイプしちゃったけど、恋が成立したからオールOK」って、昔の少コミですかこれは。古い(1996年)作品だけに、そのへんは仕方ないのかなあ。

♀♀エロ要素について

基本的に指が主体だし、異性愛規範を変になぞることもなくてよかったです。変な「背徳」「禁断」ノリでないところも拍手もの。ただ1点、胸を「ぎゅうぎゅうもむ」というくだり(p99)だけはまるでセックス下手な野郎みたいでどうかと思わんでもないのですが、あとは概して繊細な描着方だと思いました。

その他の収録作について

すずと真名シリーズ以外はすべてヘテロ物。どれも少女漫画風のリリカルなエロ漫画です。

まとめ

ただのいちゃラブものと思わせておいて、実はシリアスなレズビアンエロ漫画。一部に昔の小コミ風な展開があるところは好みが分かれそうですが、甘く優しいハッピーエンドはやはりいいです。