石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『ささめきこと(3)』(いけだたかし、メディアファクトリー)感想

ささめきこと 3 (MFコミックス アライブシリーズ)

ささめきこと 3 (MFコミックス アライブシリーズ)

少女と少女の切ない恋、第3巻。ついに怒涛の展開が!!

スポーティーな長身少女「村雨純夏」と、カワイイ女好きなレズビアン「風間汐」とのラブストーリー、第3巻。体育祭主体のインターミッション的な巻かと思いきや、意外にもふたりの恋は怒涛の進展を見せています。ハラハラ展開も最後の引きも、どれももどかしくもいとおしく、大満足の1冊です。

表紙はすべてを物語る

実は、純夏と汐の関係の変化は、表紙を見れば一発でわかるようになっています。論より証拠、1巻から3巻までの表紙を左から順に並べて見てみましょう。

ささめきこと1 (MFコミックス アライブシリーズ)
ささめきこと2 (MFコミックス アライブシリーズ)
ささめきこと3 (MFコミックス アライブシリーズ)

1巻では、純夏にとって汐は遠い存在。それが2巻では、微妙な距離を保ちつつも対等の位置に並んでいます。3巻ではふたりの間の距離がさらに縮まり、汐が純夏を後ろから見つめる構図に。
つまり、そういうことなんですよ。3巻ではついに汐が己の気持ちに気づき、怒涛のがぶり寄り(心情的に、です)を見せるんです。でも純夏はまだそれに気づかずすれ違うという、1〜2巻とはまた違った意味での切なさに悶絶。たまらん。くーっ。

流れる涙、そして「カワイイ」の再定義

純夏の涙と汐の呟き

この巻では純夏も汐もよく涙を流すのですが、個人的にもっとも胸打たれたのは純夏のこの涙。空手の練習で、“小さくてかわいらしい”(汐談)留学生のロッテに風邪をひかせてしまったことを汐から咎められるというシークエンスでの、泣きながらの台詞(pp. 98 - 100)です。

……どうせ私は…デカくてかわいくない空手バカの“暴刀村雨”ですよ

(引用者中略)

あんたにッ ロッテの何がわかるってのさ!! あの子はね 強くなりたいって 私みたいになりたいって 言ってくれたんだ! 好きって!! 強くて大きなスミカが好きって!!
……私は 小さくもカワイクもなれないからっ!!

最後の1行を涙ボロボロ流しながら叫ぶ純夏の姿に、読んでるこっちまで泣かされてしまいます。

非常に興味深いのは、この後結局自分も風邪をひいて寝込んだ純夏の寝顔を見ながら汐がつぶやく台詞(p. 106)です。これって一種の相聞歌じゃんか、とあたしは呟いてしまいました。ここにおいて純夏の考える「カワイイ」と汐の考える「カワイイ」の違いが明確に打ち出され、呼応する恋心が鮮やかに描き出されていると思います。

ふたりの出会いと「私 カワイクないから」

この巻では、純夏の回想という形で初めてふたりの出会いのエピソードが描かれます。汐が転校そうそうガチでカワイイ女のコが好きな人だと周囲にバレて孤立していたとき、さっさと一緒にお弁当を食べに行き、

風間さんはカワイイ女の子が好きなんでしょ? 私 カワイクないから別に警戒する必要もないし

と言い放っていた(p. 125)のが純夏なんですね。つまり、最初から「カワイクない」ことを盾にして汐を守っていたのが純夏であったと。

けれどこの回想の後で号泣してしまう純夏の、なんとカワイイことか。読者のみならず汐もそう思っているということは、純夏の泣き声を聞いても何も問わずにおかゆを「アーン」するところの表情を見れば一目瞭然。もともと1巻から「野獣だったり子犬だったり」(1巻p. 94)する純夏のカワイさは炸裂しまくりだったんですが、ここに至ってついに汐にもそのカワイさが共有されたわけです。ちなみに汐が自分の恋心をはっきりと自覚するところの見開き1枚絵は必見ですよ。あんなにカワイイ純夏に、カワイイ女好きの汐が心奪われないはずはないんだから、ああなるのはむしろ必然っちゃ必然ですけれども。

前途多難ではありますが

汐が己の気持ちに気づいたからって、それだけで恋愛が成就するわけではありません。いろいろあって、ふたりの恋はまだまだ前途多難そう。しかしですね、表紙に負けず劣らず雄弁な「あとがき」の1枚絵を見る限り、このふたりはやっぱりハッピーエンディングに向かっていると思うんですよ。3巻後半のハラハラ展開とラストの引きはすんごく気になりますが、光射す幸福な結末を楽しみに次巻以降を待とうと思います。

まとめ

ついに汐が純夏のカワイさに気づき、かつ己の恋心を自覚する巻でした。1〜2巻での切なさや甘酸っぱさはそのままに、ふたりの恋が加速し始めています。胸が熱くなるような百合ラブストーリーがお好きな方なら、何をおいても読むべき逸品だと言えましょう。