石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『さくらりちぇっと(1)』(月見里中、芳文社)感想

さくらりちぇっと (1) (まんがタイムKRコミックス)

さくらりちぇっと (1) (まんがタイムKRコミックス)

大金持ち×戦乙女の、ほのぼの女子高生百合4コマ

  • 戦場帰り(?)の帰国子女「桜」
  • 桜を溺愛する大金持ちの「いちじく」
  • 天才とナントカは紙一重な「こーちん」
  • 味覚が壊れた苦労人「わんちゃん」

の4人の女子高生が活躍するほのぼの4コマです。「いちじく&桜」「こーちん&わんちゃん」の2組がそれぞれカップルな百合コメディとなっています。いちじくの暴走する熱愛を楽しむもよし、こーちんとわんちゃんの友情以上恋愛未満っぽさを楽しむもよし。「戦乙女」な桜絡みの各種ミリタリーネタも面白いです。ただ、一部のギャグが栗の花臭いというかヘテロ男性目線なので、そこが気になる人は気になるかもしれません。

いちじくの熱愛について

いちじくは大変な大金持ち。桜のためなら金に糸目をつけずに温泉宿は作るわ、クラス替えで学校を買収するわ、ビーチも借り切るわという暴走っぷりを見せています。金の力に物を言わせまくっていてもまったく嫌味にならないのは、彼女の根底にある乙女な恋心のせいでしょうか。桜に手料理を食べさせたくて苦手な料理にチャレンジしたり、何気ないひとことをプロポーズと受け取って鼻血噴いたり、風邪をうつしたくない一心で桜には見舞いに来させなかったりと、基本的にすごく乙女なんですよこの人。燃えさかる恋心とそうしたいじらしさとのギャップが魅力的な、可愛らしいキャラだと思います。

こーちんとわんちゃんの友情以上恋愛未満(?)について

このふたり、途中までは完全に「幼なじみの親友」路線です。ところが、ぽそっと「デートしよ♥」なんて言葉が出てきたり、それを聞いて思わず頬染めたりするところがあって、ドキドキさせられます。この微妙な「友情以上」状態、お好きな方にはたまらんかと。

ミリタリーネタについて

桜は一見ただの天然の美少女。なのに昔のあだ名が「ヴァルキリー」(戦乙女)だったとか、戦闘中にフランス語を口走るとか、普段からマルチツールを持ち歩いている等々、謎の過去を思わせるエピソードが満載で楽しかったです。おまけ漫画とあとがきページでの、ヴァルキリーモードの姿もかっこ良すぎ。今時の軍隊にCレーションやKレーションは存在しない等、ツッコミどころもあるにはあるのですが、あくまでギャグの一環として割り切ってしまえばノープロブレム。

一部ギャグが栗の花臭い点において

女子高生たちの日常を描くほのぼのギャグ漫画であるにもかかわらず、一部に妙に男性目線な、栗の花臭い演出があるんですよ。そこだけが非常に残念でした。
具体的にどこかというと、節分のエピソードです。なぜかこの回だけ精液(つーか口内発射)やフェラチオネタのギャグがあるんですが、そこで唇のはしから液体を垂らしつつ

んく…コレのどにからまってうまく飲み込めない…

と涙目でつぶやく桜を見ていちじくが興奮する(p. 62)という図式にえらく違和感が。そこだけいちじくじゃなくて「いちじくの姿を借りた男性読者像」になっちゃってませんかコレ。この手の精液ネタやチンコネタで大喜びできるのはいちじくのような百合っ娘ではなく、ヘテロセクシュアルか、せめてバイセクシュアルだと思うんですが。ライトな百合コメディというスタンスの作品で、なぜ唐突に野郎のチンコがらみの欲望を見せつけられなければならないのかよくわかりません。
いちじくに元々そうしたトランス的な欲望があるという設定なら、まだわからんでもないんですよ。でも、これはそういう漫画ではないので、正直言って「女子高にいきなり下半身露出した男が乱入してる」みたいな強烈な違和感を覚えました。ここさえなければ、もっと良かったんですが。

まとめ

「いちじく&桜」「こーちん&わんちゃん」のどちらのカップルも魅力的なほのぼの百合4コマ。ただし、ごく一部にまるで『エンゲージ〜お姉様と私〜』のような栗の花臭い演出があり、そこだけいただけませんでした。全体としては充分面白かったので、2巻も買う予定ですけれども。