石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『Sweet & Bitter』(咲香里、笠倉出版社)感想

Sweet and Bitter(スウィート&ビター) (カルト・コミックス)Sweet and Bitter(スウィート&ビター) (カルト・コミックス)
咲 香里

笠倉出版社 1998-01
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ラブラブなレズエロ漫画「上級生」(全4話)がナイス

18禁エロ漫画。女子高を舞台とするレズビアン物の「上級生」がよかったです。女のコから女のコへの欲望をきちんと描いているところがまずいいし、タチネコを「男と女ごっこ」路線で固定せず、リバな関係を丁寧に追っていくところがすばらしい。ちょっとハラハラさせておいてからきちんとハッピーエンドに着地する最終話も楽しかったです。

「上級生」についていろいろ

1. 女のコから女のコへの欲望について

実は、最初ざっと読んでてちょっとひっかかるところがないでもなかったんですよ。

ずっと男になりたかったんです 女が好きだったから……男だったらつきあっても何も言われないし結婚だってできるでしょ

これは、ボーイッシュな上級生「秋生」を押し倒した後輩「美沙」が愛撫中につぶやく台詞(p. 82)。正直、ここだけ取ったら、同性愛とトランスを混同しているような印象も否めません。
ところが、その直前のページをよく見ると、美沙はこうはっきりと言い放ってるんです。

女だからいいんです 女の子が好きなんです

どうですかこのド直球な発言。つまり美沙の「男になりたかった」という発言は、まず、「女の子が好きで、つきあいたい」という欲望あってこそのものなんですよね。ウエイトが置かれているのは、圧倒的に女のコへの欲望の方。トランスと混同するどころか、はっきりと女のコから女のコへの欲望を肯定する作品なわけです。ちなみに美沙は外観的にはとてもフェミニンなキャラクタで、そのあたりも「女を好きになるのは男だけ」みたいな陳腐な概念から軽やかに脱却しており、よかったです。

2. リバな関係がいいですよ

途中から秋生の側が積極的に愛撫し返すところがいいなと思いました。要するにこれは、ありがちな「セックスモンスターたるレズビアンに誘惑されるいたいけなヘテロセクシュアル」パターンのお話ではなく、「もともと無自覚なレズビアン的欲望を持っていた秋生が、美沙との関係を通して幸せになっていく物語」なわけですよ。そこがとても面白いし、タチネコ固定でひたすら「男と女ごっこ」をしているような作品とは違うきめ細やかなリバエロ描写もよかったです。もちろん、貝合わせや双頭ディルド等の「ヘテロが考えたレズビアンセックス」的な部分も皆無ではないものの、単なるエロ漫画ワールドのお約束だと思えば充分納得できる範囲だと思います。

3. ハッピーエンドがすばらしい

ネタバレ防止のため詳しくは触れませんが、最終話、いいですよー。ずっと秋生のことを「先輩」と読んでいた美沙がついに名前を叫ぶシーンなんて、感涙もの。1ページをまるまる使ったラブラブ一枚絵(2箇所あり)も素敵でした。

まとめ

収録作「上級生」は、キャラクタに妙な「男と女ごっこ」をさせない、純然たる女同士のラブストーリーでした。エロにもみっちりとページが割かれていますし、ほのぼのしたハッピーエンディングも楽しいです。ラブラブなオチのレズビアンエロ/百合エロ漫画がお好きな方におすすめ。