石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『クローバー』(乙ひより、一迅社)感想

クローバー (IDコミックス)

クローバー (IDコミックス)

ほのぼの仲良しからガチ恋愛まで、四姉妹の百合的青春を綴る物語

前作『かわいいあなた』で飄々とした優しい百合ワールドを展開してみせた乙ひよりさんの新刊です。四姉妹が交代で主役をつとめるオムニバス形式で、それぞれの百合的青春が綴られていきます。ほのぼの友情系からガチ恋愛まで、ひとつひとつ彩りの違う「大好き」の描き方が楽しかったです。個人的には、やっぱりガチな美鳥(みどり)さんの恋を描く第2話「bitter girl」が好きですね。描き下ろし後日譚「Happy Days」と合わせて、女のコ同士の恋愛をほろ苦い部分も含めて丁寧にすくい上げてみせた傑作だと思います。

「bitter girl」について

「bitter girl」では、主人公の「美鳥」は高校生。ケーキ屋さんでのバイトの同僚「杉浦」(♀)の

お互い彼氏できるまで試しに付き合ってみます?

という提案(p. 44)で、女のコ同士で付き合うことになるというストーリーです。

このお話で面白いのは、女性同士で付き合うことに対する美鳥とその友人の反応が、美鳥の恋が進むにつれて着々と変化していくことです。当初の抵抗感やホモフォビアもきちんと描いてあって、それがどんどん「(杉浦と)一緒にいるとドキドキする(美鳥)」「なんか女の子同士って結構いいかもネ(友人)」と変わっていくところに説得力があってとてもよかった。もうひとつ言うと、美鳥と友人のこういったとまどいが描かれているからこそ、最初から女のコ同士の恋について

今どきめずらしくもないのに…美鳥さんって案外うぶなんですね

と言い放ってみせる(p. 44)杉浦のキャラがより生きてくるんですよね。ちなみに彼女のこの発言の真意は、最後まで読めばいやというほどよくわかります。あの涙といい、ケーキ屋さんに通ってた理由といい、ラブいなあもう。

あと、細かいとこですが、キスシーンにリアル感があってよかったです。美人の杉浦とキスしながら「まつげ長いなあ」と見とれていて「目閉じましょうよ」とツッコマれるところとか。これはほんとわかる。綺麗なおねいさんとキスしたことある人なら万人がうなずくリアルさだと思いました。

「Happy Days」について

付き合って四年半目の、やや倦怠期な美鳥と杉浦が登場します。両想いになったその先のすったもんだ(と、それを超える愛)を丁寧に描く快作だと思いました。女性同士ならではの悩みと、かまってほしい・一緒に暮らしたいというどんなカップルにもありがちな悩みの両方がうまく組み込まれていて、よかったです。幸せいっぱいのオチも素敵でした。

その他のお話について

実る恋も実らない恋も、そして友情以上恋愛未満の想いも、それぞれに味わい深くてぐっときました。あと、表情がいいんですよ、どのお話も。第1話「彼女の隣」で、困りながらも志穂の手につい見とれる卯月とか。第3話「春よ恋」の風香の、あの優しくて切ない横顔の微笑みとか。

まとめ

四姉妹のどの物語もしみじみと味わい深く、絵も表情豊かでよかったです。個人的にはやっぱり美鳥と杉浦のガチ恋愛ストーリーがおすすめ。ちなみにどの話にもモロなエロシーンは皆無なので、エロが苦手な百合好きさんにもいいんじゃないかと思います。