石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『ミカるんX(2)』(高遠るい、秋田書店)感想

ミカるんX 2 (チャンピオンREDコミックス)

ミカるんX 2 (チャンピオンREDコミックス)

怖さを増しつつ突っ走る特撮系バイオレンス百合

少女と少女が合体巨大化して怪獣と戦うという、「超人バロム1+ウルトラマンA」的な美少女バトル漫画の第2巻です。残虐シーンのコワさと格闘シーンの迫力は背筋がゾクゾクするほどなのですが、随所に仕込まれた脱力系のギャグもまた見逃せません。さらに、ミカとるんなの非常にきわどい性的シークエンスなども盛り込まれ、百合漫画としてもパワーアップしている感じ。全体的に1巻よりなお疾走感を増した、ダイナミックな1冊でした。

コワさと迫力について

まず残虐シーンについてですが「漫画版デビルマンの最終回を想起した」と言えば、そのコワさがおわかりいただけると思います。いや、別に魔女狩りも首チョンパもないんですよ。でも、「おそろしくショッキングなことが、実にあっけなく起こる」という文脈において、デビルマン的な恐ろしさがあると思うんです。あと、ナンバー4の身に降りかかったあれが怖くて怖くてもう。「おいしそう」ってそういう意味だってんですか○○○さん……!

次に格闘シーンの迫力について。ゾリンゲン星人との戦いなど、空間をダイナミックに使った描写がほんとうに巧みです。あと、戦うミカるんXの肉体もド迫力。残虐シーンがデビルマンなら、こっちはバキですねバキ。

脱力系のギャグについて

すごいなあと思ったのが、ミカさんの「えんがわうまい」(p. 181)です。戦いの最中に何やってんだと笑わされてしまいますが、よく考えたらこれって実質的にはナンバー4の身に起きた残酷なエピソード(p. 94)と変わらないことなんですよね。片方には恐怖を覚えるのに片方にはへらへら笑ってしまうのは、単に自分が地球人だからだ、と気づかされて衝撃を受けました。

つまりこの漫画って、バイオレンスシーンてんこ盛りでありながら、それだけに溺れて終わりじゃないんですよ。すっとぼけたギャグでそれらの「残酷さ」を斜めに見ていく面白さがあるんです。技の名前がしょうもなかったり、むごたらしい死を遂げるキャラたちが死の直前までめちゃくちゃ間抜けな格好で戦っていたりするのも、その一環ですよね。そういったところが非常にユニークで、楽しく読めました。ちなみにるんなの福井県ギャグも健在で、よかったです。

ミカとるんなのきわどいシークエンスについて

1巻の時点では友情百合っぽかったのですが、今回の展開には度肝を抜かれました。ネタバレになるのでスペース空けますが、






失意のミカが、自暴自棄になってるんなを犯そうとする(性的な意味で)(pp. 44-45)






んですよ。男女の組み合わせならともかく、女同士でこれをやるというのにはびっくり。結局るんなの平手打ちでミカが我に帰り、行為は未遂に終わるのですけれど、エロティックで衝撃的で、とにかく強烈な印象を残す場面でした。この事件でふたりが仲たがいするどころか、ふたたび結束してぎゅっと手を握り合う場面(p. 53)もよかったです。

その他

豊富な特撮ネタ(怪獣図鑑とか挿入歌とか)や華麗な漫画技法など、とにかくいろんなものがぎっちぎっちに詰め込まれた作品だと思います。帯の出渕裕さんによる推薦文の、

これは「ラーメン全部のせ!」それも「美味い!」

という表現は本当に当たってます。

まとめ

あらゆる意味で1巻よりパワーアップしまくった1冊だと思います。特撮好き・バイオレンス好き・百合好きな皆さんに強力におすすめ。