石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『三ツ星クリーニング―かずといずみ作品集』(かずといずみ、ジャイブ)感想

三ツ星クリーニング―かずといずみ作品集 (CR COMICS)

三ツ星クリーニング―かずといずみ作品集 (CR COMICS)

働く女のコたちのほのぼの4コマ。百合成分は耳かき一杯ぐらい

『貧乏姉妹物語』『小さな惑星の小さなお話』など、ほのぼの系の微百合話に定評があるかずといずみさんの4コマ集。主に竹書房の雑誌で発表された作品に描き下ろしを加えたもので、書店員、クリーニング店スタッフ、OLなど、さまざまな職業の女のコを主役とするお話が収録されています。ちなみに、百合っぽさは漫画家アシスタントが主人公の「締め切りです」にかすかに漂うのみ。全体比で言うと「洗面器一杯の水に対して耳かき一杯ぐらい」といった感じなので、百合漫画としてはあまり期待しすぎない方が吉。あくまでも「ほっこりした優しい4コマ集(で、たまーにかすかに百合っぽい場面がある、かな?)」ぐらいにとらえておくのがよろしいかと思います。

「締め切りです」について

「締め切りです」は、月刊COMIC RUSH2008年12月号に掲載された計16ページの作品。ひょんなことから同級生のプロ漫画家「佐藤ユーフラテス」(♀)のアシスタントになった女子高生「中島すいか」の毎日を描く物語です。すいかが寮で佐藤と同室になり、

これから夜はずっと一緒だな

と言われ、ドキッとして顔を赤らめる(p. 12)とか、ネームが行き詰った佐藤の頭をナデナデして「もっと!!」と要求されるとか(p. 16)、微百合なシークエンスがいくつか入ってます。
ただ、惜しむらくは、最終回の最終コマを見る限り、すいか本人はぜんぜん百合な人ではなさそうなんですよね。佐藤の方はまんざらでもなさそうなのですが、残念ながらこの作品はここで完結してしまっているため、発展の余地はなさげ。百合漫画として読むより、単にオタクネタ・漫画ネタの多いキュートな4コマ作品ととらえておいた方が無難かな、と思います。

その他の収録作について

発表年代が2001年〜2008年とバラバラなため、古い絵柄と新しい絵柄が混在しています。主人公たちの働く場所こそ違えど、内容はどれも「竹書房系ほんわか4コマ」といった感じです。気楽に読めるほのぼのコメディをお探しの方には良さそうですが、その反面、エッジの立ったギャグで激しく笑い転げたい人には物足りないかも。

まとめ

百合っぽさは「締め切りです」にごくわずかに含まれるのみなので、百合スキーさんはそのへんを勘案した上で読みましょう。全体としては良くも悪くも竹書房の4コマっぽい、「頭を使わなくてもまったり楽しめるのほほん漫画」といったトーンの作品集だと思います。