石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『オトメキカングレーテル(1)』(すどおかおる、一迅社)感想

オトメキカングレーテル 1 (IDコミックス 百合姫コミックス)

オトメキカングレーテル 1 (IDコミックス 百合姫コミックス)

甘やかなキス満載の、戦闘美少女百合漫画

世界から甘味を奪う怪物「フォルミーカ」と戦う乙女たちの活躍を描く物語。甘くてエロティックなキスシーンが惜しげもなく連発されるところがまずすごい。さらに、恋の障害としてホモフォビアを持ち出すんではなく、3人でドキドキし合う3Pカプ(※三角関係ではなく複数恋愛の)設定を持ってくるあたりも斬新で面白かったです。狙ったのか偶然なのか、かなりギリギリのエロ表現が出てくるところにもびっくりしたし、少年漫画風の迫力あるタッチで描かれる戦闘シーンもよかった! というわけで、たいへんたのしく読みました。

甘くかつエロティックなキスシーン、そして……

見てるだけで腰が砕けそうな、あまあまエロエロなキスシーンの数々がほんっとにすごいです。そもそも主人公「巫女志摩(みこしま)ユウ」の特殊能力が「キスした相手と同じ力(オーブ)を使える」というものなんですが、ただのキスじゃなくて、相手の体液を取り込まなくちゃダメという設定なんですよ。従って、出てくるキスというキスが、これでもかというほどのディープキス。これはエロい、エロすぎる。ていうか、息づかいや体温まで伝わってきそうなねちっこい描写がいやらしすぎる。「うう、わかるわかる」「いやーあたしゃレズビアンでよかった」「一生男女間のキスしかしない/できないヘテロの皆様、ご愁傷様」などと呟きつつ、堪能させていただきました。

あとですね。狙ったのか、それともタチキリで見切れるはずが画面に入ってしまったのかわからないんですが、p121の右下の方が大変なことになってませんか。いやあの、ちょっとだけ見えてませんかこれ? 一般誌の限界に挑戦するような、このへんのギリギリ具合も大好きです。

斬新な3Pカプ設定

ここが最もすばらしかったところ。恋の障害として安直に同性愛嫌悪を持ち出してキャラクタにウジウジさせる百合作品にはもううんざりですが――「だって現実に同性愛嫌悪は存在するんだから、いいじゃん」とおっしゃる皆様には、そうやって無批判に「同性愛者=異端視されて当然のもの」という価値観を再生産し続けることの暴力性について再考してほしいものです――さすがはあの『お願い鈴音ちゃん』をものされたすどおかおる氏。乙女と乙女の「一筋縄ではいかない恋」を演出するための装置として、ありがちな偏見の代わりにまさかの3P恋愛設定を持ってくるという離れ業が、すんごく楽しかったです。

面白いのはこうしたポリアモラスな恋を扱いつつ、「レズビアン=多情なセックスモンスター」みたいなステレオタイプも皆無なこと。ユウのキスにしても、誰彼かまわずするわけではなくて、3Pカプ相手の「ナギ」と「マリヤ」にしかしてませんしね。しかも心も伴ってますしね。とにかくレズビアニズムに対する陳腐なバイアスをうまく回避して、女のコ同士の愛とエロティシズムを明るく描きまくった快作だと思います。

迫力ある戦闘シーン

少年漫画っぽい迫力ある線とダイナミックな構図が、アクションシーンを大いに盛り上げています。決して可愛くエロくコミカルな「だけ」のお話じゃない、メリハリの効き具合に痺れました。

まとめ

同性同士のエロティシズムをたっぷりと表現しつつ、ホモフォビアは皆無な、ナイスな百合作品。アクションものとしても面白いし、何よりもドキドキもんの3Pカプ設定が光ってます。1対1のカップルが成立しないという点で、モノガミー至上主義の方には合わないかもですが、そうでない方にはめちゃくちゃおすすめです。