石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『カシオペア・ドルチェ(1)』(高木信孝、一迅社)感想

カシオペア・ドルチェ 1 (IDコミックス 百合姫コミックス)

カシオペア・ドルチェ 1 (IDコミックス 百合姫コミックス)

可愛いんだけどストーリーは弱め、ひとつひとつのキスも軽いです

百合キスが飛び交うドールハウス・カシオペアを舞台に、見習いドールマイスター「アンナ」から先生(と書いて『おねえさま』と読む)の「エルザ」への恋心を描く物語。女のコたちのまるでお人形さんのような衣装が可愛いし、キスシーンも数だけは多いです。が、ストーリーラインが弱すぎるのと、ひとつひとつのキスに重みがないのが残念な感じ。このストーリーの希薄さについては、同作者さんの『@ホーム〜姉妹たちの想い〜』にも通じるものがあるかと。というわけで、萌え要素重視かストーリー重視かで評価が大きく分かれそうな作品だと思います。

『@ホーム〜姉妹たちの想い〜』との共通点

思えば『@ホーム〜姉妹たちの想い〜』は、「『ウェイトレスは姉妹、店長がパパでお客様もみんな家族』という設定で接客するレストラン」という設定がひとつも生かされていない、単なる「メイド萌え」&「疑似姉妹イチャイチャ萌え」の塊のようなお話でした。『カシオペア・ドルチェ』もそれによく似ています。今のところ、舞台がドールハウスという設定はキャラたちの衣装にしか生かされていず、お仕事がらみの展開はほとんどなし。それどころか、画面に出てくるのはほぼ女のコたちの姿ばかりで、背景すらろくに描かれていません。ドールイベントの回でさえ、ひたすらキャラたちのコスプレ姿が四段ぶち抜きで登場しまくるのみで、イベントそのものの描写はスカスカ。ちなみに飛び交う百合キスも、その大半が恋情の伴わないキャッキャウフフ的なもの。ポリアモリー(複数恋愛)ですらない、単なる順列組み合わせ的粘膜接触。

設定やストーリーより萌え重視

つまりですね。これって要するに「ドールのような可愛いお洋服の女のコたちがちゅっちゅしてる所萌え」だけを主眼において構成されたお話であって、設定はそのための口実に過ぎず、ストーリーらしいストーリーも存在しないんですね。一応、「アンナからエルザへの片想い」がお話の屋台骨となってはいますが、ふたりとももわりかし無節操に誰とでもキスしているため、今ひとつ重みや盛り上がりに欠けるかと。少なくとも現時点では、面白いストーリーには不可欠な「特異な人間関係」とか、「人と人との対立・葛藤」は皆無に近く(アンナ個人の内心の悶々ぐらいはありますが)、そこがなんとも物足りませんでした。

まとめ

いっそ潔いまでに「萌え>>>>>>>>>>>設定やストーリー」という姿勢を貫いて、「ドールのような可愛いお洋服の女のコたちがちゅっちゅしてる所」を描きまくった漫画だと思います。そこをどう取るかで、好き嫌いがまっぷたつに分かれる作品なのではないかと。個人的には、「気持ちというか前後の文脈がともなわないキスなど、ロシアのおっさんどうしが単なる挨拶でぶっちゅーとキスしてるのと何が違うのか」と思ってしまうタイプのため、今ひとつお話にノれませんでした。引き続き今後の展開を見守りたいと思います。