石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『ぱわふる4拍子』(白河まいな、双葉社)感想

ぱわふる4拍子 (アクションコミックス)

ぱわふる4拍子 (アクションコミックス)

『ぱわふる4拍子』というより『マイルド4拍子』

タイトルに反し、パワフルというよりマイルドなギャグがゆるゆると展開される学園萌え4コマ。萌え要素がほとんどステレオタイプの域を脱していないところがちょっと残念。百合ネタもかなり薄味だし、キャラクタもギャグものにしてはおとなしい印象を受けます。ただし絵柄はとても可愛らしく、「キュートな小学生女子たちのなごみ系4コマ」をお探しの方にはツボかもしれません。

萌え要素について

巫女もスク水も双子も、それ「だけ」を記号的に提示したところでもはや新鮮味に欠けると思うんですよ。どこかにもう少し、この漫画でしか読めないようなひねりが欲しかったところです。たとえばp. 126の

フィーッシュ!

みたいなインパクトあるギャグをもっと多めにして、各萌え要素に絡めてくれたらもっと嬉しかったなあ。

百合ネタについて

変人キャラの「リコ」が、おとなしい巫女キャラの「夕」を好いているという設定です。ロールプレイで夕の旦那さん役をやりたがったり(p. 81)、「趣味は夕ちゃん鑑賞」(p. 91)だったり、夕の父親に向かって「夕さんを私にください!」(p. 136)と口走ってみたりと行動そのものはかなりアグレッシブに見えるリコなのですが、全体的な印象はどこまでも微百合な感じ。

これはなぜかと考えるに、リコの想いの根底にあるのが恋情というより「萌え」に見えてしまう物語構造だからなんですね。具体的には、第1〜2話でのリコの言動が、リコ個人の内発的な感情というより、単に一般的なオタク(それもどっちかというと男性オタク)の「巫女」「双子」「かわいい小学4年生」に対する紋切り型の萌えを代弁しているだけであるように読めてしまうのがネック。とっかかりがそれなので、その後のキャッキャウフフもどことなく「萌え>好き感情」に見えてしまうんですよ。百合ものとして読むには、そのあたりが物足りなかったです。

キャラクタについて

どのキャラも、丸っこい4頭身の絵柄が本当に可愛いです。ただしギャグ4コマにしては皆さん強烈さが足りない感じ。変人のはずのリコはそれほど変人に見えないし、沙恵の貧乏クジ設定も本人が嘆くほど不幸を呼び込んでいるようには見えません。また、キャラクタ同士の対立や葛藤もさほど登場しません。この作品全体に漂う茫漠としたマイルドさ、またはヌルさは、こんなところから来ているんじゃないかと思います。

まとめ

ギャグとしても百合ものとしても非常におとなしい印象を受ける萌え4コマ。パンチのきいたコメディや、はっきりと恋愛寄りの百合展開を求める方には向きません。反面、なごみ系のゆるめの萌え作品がお好きな方にはジャストフィットかも。というわけで、ある程度読み手を選ぶ作品だと思います。