石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

映画『8人の女たち』感想

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カラフルな「歌う推理劇」(レズビアン要素多め)

舞台劇をもとにした、カラフルな「歌う推理劇」。雪に降り込められた屋敷で殺人事件が起こり、犯人を探すうちに、屋敷にいた8人の女たちの隠された秘密が明らかになっていくという筋立てなんですが、女性同士のカップリングが計4通りも出てくるところにびっくり。それもガチな人あり切ない思慕あり情熱的なキスありとバラエティに富んでいて、非常に面白かったです。お話自体も、単なる犯人探しのミステリではなく、女性や家族の本質をシニカルかつユーモラスに描いていくところがよかったし、最後のどんでん返しにも「やられた」と思いました。あと、なんといってもメイド服で踊り狂うエマニュエル・ベアールがよかった。つか、出てくる数々の大女優全部よかった。眼福。

レズビアン要素について

「たしか女同士のキスシーンがあったよね」ぐらいのうろ覚えの記憶に頼って見たので、カップリングの多さにびっくり。女性と女性の意外な組み合わせが次から次へと出てきて、最終的に官能的なキスシーンを演じるのはなんとあの人とあの人、というたたみかけるような展開に目が釘付けでした。両想いに至らない一方的な思慕があったりするところも面白かった。写真や衣装、髪型なんかの使い方もうまかったなー。レズビアニズムに対するバイアスのかかった台詞がきちんと(というのも変ですが)出てくる一方で、それを非難する発言もしっかり入ってる、というバランスの取り方もよかったです。

その他あれこれ

歌とダンス

これが実に心憎かった。劇中で8人の女たちが1曲ずつ歌って踊るんですが、それがひとりひとりのキャラの性格説明になっているのみならず、複雑な推理劇の中のチェンジ・オブ・ペースとしてもしっかり機能してるんです。観客を楽しませつつ、たくさんのキャラクタをきれいにさばいてお話をまとめていく、うまいやり方だと思いました。どの曲もブロードウェイ的ながっちがちのミュージカル仕立てではなく、もっと小芝居的なパフォーマンスであるところがまたよかった。冒頭でも書きましたが、エマニュエル・ベアールのメイド服ダンスが個人的にはいちばん好きです。

女性の本性

これってひとことで言うと「女性の欠点や残酷さを描きだす映画」なんですよ。でも、「これだから女は」的な見下しテイストはぜんぜんなくて、むしろ全体的には女性への賛辞とも受け取れるつくりになっています。特にラストシーンのアレ、ドヌーヴの提案でああなったんだそうですが、微苦笑とともに女性の本質を抱擁してみせるような、面白い演出だと思いました。こういう映画だからこそ、一面的にレズビアニズムを否定したりしないんだろうなあ。

女優の皆様

イザベル・ユペールの目の覚めるような変身とか、ファニー・アルダンの傲慢なまでの色っぽさとか、ドヌーヴの繊細さとか、エマニュエル・ベアールの毒と官能とか、皆とてもよかったです。衣装の色がそれぞれの女優に合いまくっているところもステキでした。

最後のどんでん返し

これはもう「見てください!」としか。アメリカではクライマックスのとある場面がカットを要求されたそうですが、あれは入れなくちゃダメでしょー、と思います。推理劇でありつつミュージカルでもあり、同時に女の本性を暴くコメディでもあり、なおかつ女だけでなく「家族」について考察する物語でもある、というこの作品の多層性が怒涛の勢いで現れる、すんごい結末でした。

まとめ

女性の本性を微苦笑とともに描いてみせる、小粋な推理劇です。予想以上にレズビアニズムにスポットが当たっているところがよかったし、息を飲むどんでん返しもすばらしかった。独特の舞台劇っぽさも面白かったです。おすすめ。