石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『BE-TWINS』(越智月子、小学館)感想

BE-TWINS

BE-TWINS

帯に騙されたorz

昭和のカトリック系女子校が舞台のジュブナイル小説なのですが、

少女×少女×少女の、世界にひとつの三角関係。

女子を好きになってしまった。しかも、彼女は双子だ。

……という帯の煽り文句に完全に騙されました。三角関係なんかじゃなく、単に親友を「取った」だの「取られた」だのというオンナノコ同士の感傷的なすったもんだを描く作品ですよこれ。恋愛感情とは無縁のお話なので、「好きになってしまった」という形容もどうかと思います。百合ブームに便乗して売ろうとしたのかもしれませんが、やり方があざといなあ。

面白い点もないわけではなくて、いかにも昭和っぽい雰囲気とか、メインキャラの中一少女たちの初々しさとかは悪くないと思うんですよ。けれど、前述のように売り方がズルい点がまずマイナス。さらに、オンナノコ同士の秘密がどうした、裏切りがどうしたという派閥チックな交友関係に共感できる人でないとついていきにくいストーリーもややマイナス。結論としては、この小説の対象層は、

  1. 昭和のレトロな雰囲気を、懐古的に、または新鮮な異文化として楽しめる人で、
  2. いかにも女子チックなべったりした友達づきあいが大好きな人

なのであろうと思いました。1はともかく2の点で完全に脱落してしまうあたしには、ちょっと無理だわ。

まとめ

ひとことで言うと、「昭和の空気の中で展開される、中学生女子の自意識と友情と独占欲の物語」。思春期に友達と友達の狭間で小さな胸を痛めたことのある、ナイーヴな方向けのジュブナイル小説だと思います。恋愛どころか「友情以上恋愛未満」にさえも至らない友情ベースのお話なので、百合目当てで読むには注意が必要かと。