石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

PCゲーム『その花びらにくちづけを 唇とキスで呟いて』(ふぐり屋)レビュー

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ふぐり屋
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ゲームや物語というより、「美しいCG集」?

ふぐり屋さんの18禁同人百合ゲー『その花びらにくちづけを』シリーズ第6弾です。1作目のメインカップル「七海」と「優菜」が再び主人公となり、あまあまデレデレな日々を繰り広げるというラブコメなのですが、こ、これは評価が難しい……。というのは、CGがいつもながらのハイクオリティを保っている一方で、ストーリーはシリーズ6作中でもっとも起伏に欠け、かつ、焦点がぼやけているからです。物語らしい物語が形成される前にあっけなく結末(結末自体はラブくてナイス)を迎えてしまうので、全体的な印象は「『ゲーム』や『物語』というより、『美しいCG集』」といったところ。百合ゲーに何を求めるかによって大きく評価が変わってくる作品だと思います。

CGについて

Extraで見られるCGは差分無しで計20枚、Hシーンは計7種。いつも通りに可愛らしく繊細な絵柄です。また、エロ絵以外に「おずおずと優菜の制服の裾を引っ張る七海」「七海の頬についたクリームを舐め取る優菜」なんていうラブラブ絵もしっかり含まれているところが好印象でした。

ストーリーについて

もともと「花びら」シリーズにおいてはストーリーなどあって無きが如しであり、その「百合ん百合ん度>>>>>>ストーリー」という思い切りの良さがかえって面白かったことは否めません。が、それにしても今回のお話には首をかしげざるを得ませんでした。物語の起伏が6作中もっとも少なく、さらに焦点がぼやけていて、ドラマらしいドラマが起こらないままお話が収束してしまうからです。「七海がお姉さまに相応しい子になろうとする」というテーマと、優菜の留学の話、そして優菜から見た七海の浮気疑惑……と、お話がどんどんとっちらかっていく上に、七海も優菜も脳内で漠然と困っているだけで、そのうちなし崩しに問題が解決されてしまうというところがなんともかんとも。

クリストファー・ヴォーグラーが唱えた「ヒーローの旅」の例をひくまでもなく、あらゆる物語の原型は、「主人公が苦難を乗り越え、宝(報酬)を手に入れる」というものだと思います。しかし、『唇とキスで呟いて』の主人公たちは最初から最後まで「報酬」(ラブラブな恋愛関係とセックス)をがっちり握りしめたまま、平凡ではっきりしない「苦難」に予定調和的に嘆いてみせるだけ。しかもその「苦難」を「乗り越える」ことも特になく、「誤解でした」「なーんだ」で全て終わり。これをどう受け取るかは人によって違うと思いますが、「物語が面白いかどうか以前に、物語自体が始まっていない」とあたしは解釈しました。

エンディングについて

1作目と違い、ずっと続く愛を示唆する終わり方で、これはとてもよかったです。それだけに、そこに至るまでの対立や葛藤をもう少しはっきりと打ち出した方が、結末のカタルシスや甘美さも増したのではないかと残念に思います。

まとめ

良くも悪しくも『花びら』シリーズらしい特徴、すなわち

  1. 美しいCG
  2. あまあまエロエロ路線
  3. マイルドで起伏少なめのストーリー

の3点が極端に表れた作品だと思います。特に3点目は今回本当に極端なので、ストーリー重視派の方には合わないかと。反面、「とにかくらぶらぶデレデレでハッピーエンディングな百合カップルの姿がたっぷり見られればOK!」派の方には非常に美味しい一品なのではないでしょうか。というわけで、ニーズによって評価がかなり分かれそうな作品だと思います。