石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『落花流水(4)』(真田一輝、芳文社)感想

落花流水 (4) (まんがタイムKRコミックス)

落花流水 (4) (まんがタイムKRコミックス)

油断してたらいきなり進展

女子校弓道部が舞台の百合4コマ、第4巻。秋穂と水夏の恋の展開は相変わらずスローなのですが、一見進展はないかと思わせておいていきなり距離を詰めるという二段オチに「やられたー」と思いました。秋穂の鼻血ネタが復活しているのも楽しいところ。夕と暁のバカップルのガチ度がさりげなく上がっているところも面白かったです。考えオチが多めなところも楽しかった。

やられたー

まずは、水夏のこちらの台詞(p. 60)をどうぞ。

今より仲を深められるって言っても…友達? 親友?
どんな付き合い方すればいいのか分からないし
そんな無責任にあの子のこと受け止めてあげられない…

ここだけ読んで、「結局『恋愛まで行ったらやりすぎだし』みたいなヘテロノーマティヴな発想で、永遠の寸止め状態で終わっちゃう漫画なのかしら」とちょっと悲しく思ったんですよ。実際、秋穂と水夏の仲はこれまで非常にゆっくりなペースでしか進展していませんし、1〜2巻で顕著だった秋穂の欲望込みの恋情も、3巻あたりではずいぶんおとなしくなってしまってましたしね。

ところがその予感は、わずか1ページ後にいい意味で裏切られました。「下げてから、上げる」という意表をつく展開に鼻血を吹きそうになったのは、秋穂だけではないはず。あんな前フリをしといてからいきなり距離を詰めてくるんだもんなー、ずるいわ水夏先輩。まるで「スローカーブに目が慣れた頃に内角速球を投げられ、思わず三振してしまった野球部員」みたいな気分になってしまいましたよもう。

ガチ度もさりげなくアップ

秋穂の鼻血ネタをはじめとする欲望全開のギャグが復活してます。また、既にカップル成立している夕と暁はほぼ完全にガチ街道を驀進中。「日焼けの跡がないってことは」(p. 54)とか、夕が誤爆したらしい恥ずかしいメール(pp. 89 - 94)など、楽しかったです。さりげなく官能の香りをほのめかしつつ、けっしてあざといエロに向かわないところもナイス。

考えオチの数々

ちょっと考えてから「……ああ!」とニヤニヤさせられる、というギャグの数々がとてもよかったです。百合ネタだけでなく、こういうひねりを効かせた笑いも『落花流水』の見どころのひとつだと思います。

まとめ

恋の進展そのものはゆっくりなのに、水夏のフェイント攻撃で必要以上にドキドキさせられてしまった1冊でした。全体的にガチ度が上がっていて、それでいて少しも下品になっていないところもナイス。考えオチの仕込み方も素晴らしく、恋愛面でもギャグの面でもとても充実した百合4コマだと思います。