石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『ネコミミデイズ』(草野ほうき、ワニブックス)感想

ネコミミデイズ (ガムコミックスプラス)

ネコミミデイズ (ガムコミックスプラス)

淡々としたソフト百合漫画(ネコミミ付き)

ネコミミな人とネコミミでない人がフツーに共存する、ちょっと変わった世界の物語。ネコおよびネコミミの人々に好かれる体質の主人公「ひな」と、ネコミミの親友「柚子」とのソフト百合漫画でもあります。かなり淡々としたタッチのお話な上、ひながネコミミ男子ズに好かれる展開もあったりするので、途中までは正直あんまり百合っぽくないです。が、それだけに、最終回の展開にはちょっと驚かされました。ちなみにコメディとしてはかなりマイルドな方で、ありがちな萌え記号に打ち勝つだけのインパクトがもう少し欲しいところ。

この世界のネコミミ観

「ネコ風邪」なる病気にかかるとネコミミが生える(こともある)という設定が面白かったです。おかげで街の人が誰もネコミミについて疑問に思わず、ネコミミ族と非ネコミミ族がナチュラルに共存しているというあたりが、SFチックでユニークでした。ちなみにネコミミや猫そのもの(動物の方の)の描写なども、とても可愛くてよかったです。

百合漫画としての『ネコミミデイズ』

柚子はひなにべったりではあるのですが、なにぶんひなの「ネコに好かれる体質」という設定のため、好き感情があまり伝わってこないのが残念でした。好きだからべったりなのか、単にひなの体質に魅了されているだけなのかが、今ひとつわかりにくいんです。そもそもひなに夢中になるのは柚子だけではなく、ありていに言って最終話以外は複数キャラからのひな総受け状態(しかも愛というより体質ゆえの)だったりもしますしね。あと、ひなが男子たちから溺愛される回もあるので、男女要素が少しでも入っているとダメな方には合わないかも。

ただ、途中までがあまり百合っぽくないだけに、最終話でのあの展開にはちょっと驚きました。唇にではないもののちゅーもあるし、相手を好きな気持ちもちゃんと表現されてますしね。友情と受け取れる範囲のソフトな内容ではあるのですが、あの最終回は百合だと個人的には思いました。最終ページ(p. 190)もほのかにラブくてよかったです。

コメディとしての『ネコミミデイズ』

淡々とした間の取り方は楽しいのですが、メイド服やスク水など、既存の萌え記号の扱い方にひねりがないところが今ひとつ。ありがちな萌え記号をただ消費するんではなく、もう少し独自の味付けをして欲しかったところです。

まとめ

百合ものとしてもコメディとしても割合ぬるめな作品だと思いました。ただし絵の可愛らしさやさらりとした間の取り方はよかったし、最終話のほのかなラブさも悪くないと思います。ほのぼの日常漫画系の友情百合がツボな方にはいいかも。