石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『総天然色乙女組(2)』(みなづき忍、メディアファクトリー)感想

総天然色乙女組 2 (MFコミックス アライブシリーズ)

総天然色乙女組 2 (MFコミックス アライブシリーズ)

今回はホモフォビアゼロ。すっきり読める学園4コマ(微百合あり)

天真爛漫な「朱音」(あかね)、ボーイッシュな「青伊」(あおい)、ダークな美人霊能者「翠」(みどり)の女子3人が活躍する学園4コマ、第2巻。1巻には「共学で同性同士は非建設的」(要約)なるホモフォビック発言がありましたが、今回はそうしたホモフォビアはまったくなく、楽しく読めました。キャラを生かしたすっきりしたギャグがいいし、要所要所の見せ場の作り方も見事です。百合方面に関しても、「青伊は無自覚な王子様、そこに紅子がひたすら片想い」という路線が確立されてきていて、より読みやすくなってました。

キャラを生かしたすっきりギャグ

読み始めてすぐ気づいたのですが、この本には巻頭キャラ紹介のページがありません。鳥頭を押して年間200本以上の百合作品を読んでいる自分としては「うわ、キャラ忘れてたらどうしよう」「1巻持って来なくちゃダメかしら」と焦ったのですが、いざ読んでみたら全然そんな必要はありませんでした。登場人物たちのキャラが立ちまくっているため、いちいち紹介ページなんか見なくても、「この人はこういう人」というのがばんばん伝わってくるんですね。おかでで自動的に1巻の内容も全部思い出すことができ、とても読みやすかったです。

キャラの立て方のうまさはギャグにも十分生かされており、4コマにありがちな「無理矢理キャラをドタバタ動かして笑いを取る」というぎこちなさは皆無。常時キグルミの一之瀬兄や底知れぬダーク乙女の翠など、放っておいてもキャラが勝手に動き回る感じで、すっきりとした笑いを生み出していると思います。

要所要所の見せ場も見事

ストーリー漫画風のぐっとくる見せ場作りがとてもうまい作品です。漫然と笑わせて終わりじゃないところが、実に心憎い。特にプールや花火、学園祭のエピソードなど、大ゴマや一枚絵を巧みに配して描き出される余韻と風情がたまりません。

百合方面も読みやすい

1巻では青伊のヘテロ性が強調される(その一環として例のホモフォビック発言が出てきたりするわけですが)反面、「女子の名前を全部把握している」などのオンナノコスキーっぷりも描かれていたりして、百合方面の軸がブレ気味だったように思います。が、2巻では

  • 青伊はヘテロ女子だけど王子様キャラ(本人はモテぶりに無自覚)
  • 一般女子は青伊にメロメロ
  • 中でも紅子は青伊にマジ惚れ

という路線が確定しており、話の流れがより安定しています。ぶっちゃけ紅子の恋がかなう可能性はほぼゼロなのですが、百合物としてはこれはこれで面白いかと。かなう恋だけが恋じゃありませんものね。あと、片想いの不毛さだけでなく、青伊からやさしくされたり飴をもらったりした瞬間のささやかな幸福がきちんと描き込まれているところもよかった。

まとめ

今回はホモフォビアはゼロだし、百合方面にもブレがないし、何よりもキャラたちの強力な個性が生み出すギャグが冴え渡っていて、非常に楽しく読めました。要所要所の見せ場がお話をぎゅっと引き締めているところもみごと。まったりすっきりな微百合4コマをお探しの方におすすめです。