石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『やってきたよ、ドルイドさん!(1〜2)』(志瑞祐、メディアファクトリー)感想

やってきたよ、ドルイドさん! (MF文庫J)

やってきたよ、ドルイドさん! (MF文庫J)

やってきたよ、ドルイドさん! 2 (MF文庫J し 4-2)

やってきたよ、ドルイドさん! 2 (MF文庫J し 4-2)

スカッと笑える百合コメディ。2巻ラストの展開にモエモエ

アイルランドからの帰国子女にしてドルイド(自然の守り手)の「ホリン・シャレイリア」が巻き起こすドタバタコメディ。主人公「白川夏穂」からシャレイリアへのベタ惚れぶりを描くパワフルな百合小説でもあり、とても楽しく読みました。主人公「白川夏穂」がシャレイリアにベタ惚れしているパワフルな百合小説でもあり、とても楽しく読みました。特に、予想外の甘やかな展開を見せる2巻ラストは圧巻。シャレイリア(通称シャレ子)のすっとぼけた性格も魅力的ですし、脇の皆さんがことごとく良い味出してるところも楽しかったです。よく計算されたオタクネタの数々もよかった。難点は2巻にいくつかオチが弱い回があるくらいのもので、トータルすると大満足の2冊でした。

百合小説としての『やってきたよ! ドルイドさん』

夏穂の一方的なラブラブダイナマイトっぷりがたまりません。1巻序盤でこそシャレイリアの美貌に見とれるだけだった彼女ですが、ページを追うごとに「思わずその場でロザリオを渡したくなってしまうほどにキュート(注:森野学園にそんな風習はありません)」などと考え始めたり(p.
109)、唇を近づけられてドキドキしたり(p. 110)「もっとこう、ぐっとくる感じ」(p.
219)なシャレイリアのボディラインをガン見していたりと、完全に百合少女への道をまっしぐらです。

ちなみに2巻の夏穂はさらにエスカレートし、シャレイリア相手のエロティックな妄想(多数)に身悶えするわ、どさくさにまぎれて結婚は申し込むは(p. 38)、

「か、夏穂……いったい、どこを洗うつもりなのだ」
「ふふふー、どこがいい?」
耳元で、からかうように囁きながら、
すーっ。
あたしは泡だったスポンジを、二の腕、お腹、太腿へ、ゆっくりと下ろしていく。
「か、夏穂、そこは、ひゃんっ――」
「ん、ここがどーしたの?」
「あっ、んっ――」
シャレイリアの肢体がぴくんっと震える。

なんていうお風呂シーンを本当に繰り広げる(pp. 194 - 195)わで、もうとどまるところを知らぬ暴走状態。もっとも、基本的にコメディ路線なこともあり、夏穂の恋情と欲情はそのほとんどがひとり上手ではあるんですよ。でも、単なるギャグものだと思って油断していると、2巻ラストのあまあまな展開に驚愕することになります。ふ、不意打ちとは卑怯なり。不覚にもモエモエしちゃったじゃないですか。

キャラの性格について

夏穂については先述の通り。「真面目な委員長という設定のはずだった」(2巻あとがきより)とはとても思えないハチャメチャさが最高です。あと、シャレイリアの型破り具合がたいへんにチャーミング。遠藤淑子描くところの姫様キャラのよう、と言えばわかる人にはわかるかも。実際、美少女のはずのシャレイリアがモミの木の着ぐるみを着てぼーっとしているところなど、牛とタンゴを踊るエヴァ姫に勝るとも劣らぬインパクトがあると思います。どこまでも我が道をゆくトラブルメイカーで、でも、ここぞと言うときには一本背骨の通った活躍を見せるという性格づけが、とてもよかった。

他に忘れてはならないのが、脇を固める面々の実力。クールなマイペース眼鏡「雪那」や夏穂の不憫な弟「聡史」など、皆個性的でよかったです。雪那のしらたき及び聡史のメロンの話など、キャラの行動を介して性格を表現していくのがとてもうまい作者さんだと思いました。

オタクネタの数々について

「よくもこんな細かいところまで」と感心するほど至る所にマンガやアニメのネタが仕込まれた作品です。スッポンの名前までアレだったところには吹き出してしまいました。その反面、どの部分も元ネタを知らない人でも楽しめるようにきちんと配慮されているところはみごと。「知らなくても楽しめる、知っていればもっと楽しめる」という、まさに痒いところに手が届くようなオタクネタの組み込み具合でした。

残念だったところ

2巻第1~3話あたりの結末に、やや尻切れトンボ感が漂っているような気が。オチをまとめるのが難しいというのはスラップスティックコメディの宿命かもしれませんが、そこだけちょっと残念に思います。

まとめ

キャラたちのユニークな性格づけがきわだっている上に、百合小説としてもアグレッシヴかつモエモエ。ごくごく一部にだけオチの弱い回がないでもないですが、ドタバタ学園コメディとしては十分すぎるほどの「笑い」を提供してくれる作品だと思います。すっきり笑える百合/レズビアン小説をお探しの方におすすめ。