石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『海洋危険生物う〜みん(1)』(臣士れい[画]/里尾昴[原作]、ワニブックス)感想

海洋危険生物う~みん(1) (GUM COMICS)

海洋危険生物う~みん(1) (GUM COMICS)

海が舞台の脱力系変身ヒロインコメディ(百合あり)

中学生の「守美汐」(まもり みしお)が、海の妖精「う〜みん」とのキスで海洋生物と合体して戦うドタバタコメディ。毎度毎度の変身姿があまりにも脱力系なところと、今のところ「海の眷属を守る」という目的が微妙に空回りしているところが面白かったです。百合メインのお話ではないのですが、「海の生物を助けるにはどうすればいいのか」というメインプロットと、「男女恋愛と女女恋愛が錯綜する思春期三角関係」というサブプロットがうまく絡めてあって、楽しく読めました。

メインプロットについて

ひらたく言うと「ヒロインが海の平和を守る話」なのですが、ありがちな「自然を守れ」調の説教臭いストーリーには全然なっていないところが面白いです。そもそも美汐の変身姿が常に間抜けな着ぐるみ風(オキザヨリとか)または全身タイツ風(アカウミガメとか)だったりして、少しも「正義の味方」然としていないところがいいんですよ。

う〜みんは漁師を「悪の殺戮者」と決めつけていますが、それが間違っていることはお話の中できちんと示唆されています。また、美汐にしても、漁師さんとの戦いにはいつも後ろ向き。そんなわけで今のところふたりの行動は微妙に空回りしていて、そこがかえって面白かったです。要するにこれは、「正義の味方が悪を討つ話」ではなく、「う〜みんと美汐が、『本当に海の眷属を守るためには何をなすべきか』に気づいていく話」なんじゃないかと思います。

サブプロットについて

美汐はクラスメイトの少年「櫂渡」(かいと)に恋をしている上、う〜みんとのキスはただの変身用プロセスであって、そこに恋愛感情は存在しません。が、第3話から登場する「丈瑠」(たける)という少女が美汐に片想いしているところがミソ。これにより丈瑠→美汐→櫂渡→丈瑠という三角関係が完成し、甘酸っぱい思春期恋愛ものとしても楽しめる内容になっています。とりあえず、美汐とう〜みんのキスを目撃してしまって悶々と悩む丈瑠の姿が可愛いです。

まとめ

自然を守るお話でありつつ少しも説教臭くないところがいいし、キャラたちの初々しい恋愛模様もキュート。特に丈瑠の報われない百合恋愛がいたいけで、よかったです。ただし、百合が主体のお話ではないので、そこだけ注意。あくまでも、「ギャグ路線の海洋アドベンチャーの中に百合キャラも出てくる作品」ぐらいにとらえておくのが吉かと思います。