石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

百合アンソロジー『つぼみ VOL.2』(芳文社)感想

つぼみ VOL.2 (まんがタイムKRコミックス GLシリーズ)

つぼみ VOL.2 (まんがタイムKRコミックス GLシリーズ)

百合の地平を広げる1冊

VOL.1同様、萌え系・思春期系のお話だけでは終わらない幅の広さがとてもよかったです。今回の特徴は、親子(血のつながらない親子含む)や姉妹などの家族ネタがやや多かった(17本中計5本)ことでしょうか。それ以外は女子高生あり人外和風伝奇ありOLあり犬耳少女ありエレベーターガールありといった具合。恋愛要素も盛りだくさんですが、「恋愛」という枠だけではおさまらない関係性を描く作品も多くあり、百合ジャンルの裾野を積極的に模索するアンソロだと感じました。1冊を通じて、ホモフォビアがほとんど感じられないのも嬉しいところ。

印象に残った作品など

「しまいずむ(その2・その3)」(吉富昭仁)

親友同士でそれぞれの妹に惚れている「芳子」と「遥」の物語。この姉ふたりのおバカっぷり&欲情っぷりと、純真な妹たちの可愛らしさとの対比が楽しいです。新聞紙ビキニの股間ネタにもウケまくりました。笑いとエロティシズムの両方を楽しめる、心憎いコメディだと思います。

「オオカミの憂鬱」(水谷フーカ)

女のコにモテモテなエレベーターガールがゴスロリ少女に翻弄されるお話。エレベーターガールが自分は女の子が好きな人だときっぱり自覚しているところがまず面白いし、ドタバタなギャグ部分も、最後のオチも皆よかったです。ゴスロリ少女のあの決め台詞もすばらしかった。

「エビスさんとホテイさん(第2話)」(きづきあきら+サトウナンキ)

エビスさんとの距離をどうにか縮めたホテイさん。そこに意外な展開が? というところで終わっています。今回面白かったのは、ホテイさんのこのモノローグ。

好き? これが?
もしもエビマヨが
年上だったり異性だったら
憧れとか
なにか違う感情だったのかもしれない

だけど
同い年の 同性なんて
相手が輝いていればいるほど
嫉妬や
あせりや
劣等感が
グチャグチャになって
ワケがわかんなくなっちゃう

相手が同い年だろうと同性だろうとこういう発想がまったくなかった自分にとっては衝撃の異文化でした。なるほど、この「グチャグチャ」感がこの作品の最大のポイントなんだなあ。今回は、エビスさんの側の「グチャグチャ」とおぼしきところもチラリと垣間見えていたりして、そのへんも興味深かったです。

「星川銀座四丁目」(玄鉄絢)

血のつながらない少女を娘に引き取ろうと頑張る先生の物語。絵、相変わらず綺麗だなー。あと、あの鮮やかなオチに唸らされました。まさかあれが伏線だったとは。恋愛というのとは少し違うかもですが、よかったです。
ちなみに今回はカバーイラストも玄鉄絢さんなんですが、表紙・裏表紙で一種の続き物のストーリーになっています。何も考えずに裏表紙を見て、思わず萌え死ぬかと思いました。書店で手に取られる方は要注意。

「ピンク色」(大朋めがね)

女子校三角関係ストーリー。予定調和的にカップル作ってめでたしめでたしにしてしまわないところが好きです。前作の養護教諭のもなよさんがさりげなく登場しているところにもニヤニヤさせられました。「雪の中ではしゃいで熱を出したルームメイト」というのは、してみると、あの人ですね。

執筆陣一覧

表紙からそのまま写しておきます。

  • 玄鉄絢
  • 宇川弘樹
  • 吉富昭仁
  • 森永みるく
  • 関谷あさみ
  • きづきあきら+サトウナンキ
  • 裏次郎
  • 宮内由香
  • 水谷フーカ
  • 小川ひだり
  • 天乃タカ
  • 吉田美紀子
  • ナヲコ(カラーイラスト)

まとめ

今回もバラエティ豊かで楽しい1冊でした。このままVOL.3、VOL.4とずっと続けていってほしいです。